「北斗星」の現状に失望と期待 鉄道クラウドファンディング“成功の条件”とは杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)

» 2019年12月23日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

福岡市の20系客車プロジェクトは長期的な展望が必要

 もう一つ気になったプロジェクトがある。福岡市の貝塚公園にある寝台客車の修復プロジェクトだ。この客車はJR九州が福岡市に貸与している車両だが、公園内に放置されたまま手入れが行われず、やはり朽ちていく一方だった。それを見かねた高橋竜氏が、2012年に自費で修復を願い出て、塗装と内外の修繕を実施した。

貝塚公園で保存されている20系客車。ブルートレインの最初の形式だ。撮影は2006年。個人による最初の修復作業前

 それから7年、再び傷みが目立っている。しかし当時と違って自己資金は尽きていた。そこで、クラウドファンディングによる資金提供を呼びかけた。そこまでは理解できる。しかし、ここで小学5年生のS君が旗振り役として登場する。ここに違和感を持った。

 「わざわざ子どもを担ぎ出す必要があるのか」

 個人的な感想だけど、テレビCMで子どもを使う手法は好ましくない。子ども向けの商品は分かる。オムツのCMの赤ちゃん、お菓子や玩具のCMは子どもが喜ぶ様子が好ましい。しかし、子ども向けではないCMに子どもを出すやり方は、母性、父性をくすぐるズルイ方法だと思う。今は放送されていないようだが、ある電器店のCMで、少女がしなを作っていた。その表現にどんな意味があるのか。

 特に近年の政治的な場面で、子どもが主張する手法が痛々しい。反戦メッセージの作文を扇情的に読み上げる中学生とか、環境問題で過激な発言をする少女、彼女に感化されてメッセージを掲げて電柱に上った少年。彼女や彼の本心だろうか。周りの大人がそそのかしているのではないか。大人に利用されていると知らずに演じているのではないか。

 私の偏見だと自覚しつつ、子どもを前に出すクラウドファンディングは見送ろうと思った。子どもを出すかどうかも理由だが、こちらも屋根を付けないプランだ。つまり、今回は成功しても、また7年後に同じことを繰り返す。もともと保守修繕は、同じことを地道に繰り返す作業だとは思うけれども、それができないならば、デジタルな資料として残し、解体してもいい。きれいなままの思い出を残したい。

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