もう一つ気になったプロジェクトがある。福岡市の貝塚公園にある寝台客車の修復プロジェクトだ。この客車はJR九州が福岡市に貸与している車両だが、公園内に放置されたまま手入れが行われず、やはり朽ちていく一方だった。それを見かねた高橋竜氏が、2012年に自費で修復を願い出て、塗装と内外の修繕を実施した。
それから7年、再び傷みが目立っている。しかし当時と違って自己資金は尽きていた。そこで、クラウドファンディングによる資金提供を呼びかけた。そこまでは理解できる。しかし、ここで小学5年生のS君が旗振り役として登場する。ここに違和感を持った。
「わざわざ子どもを担ぎ出す必要があるのか」
個人的な感想だけど、テレビCMで子どもを使う手法は好ましくない。子ども向けの商品は分かる。オムツのCMの赤ちゃん、お菓子や玩具のCMは子どもが喜ぶ様子が好ましい。しかし、子ども向けではないCMに子どもを出すやり方は、母性、父性をくすぐるズルイ方法だと思う。今は放送されていないようだが、ある電器店のCMで、少女がしなを作っていた。その表現にどんな意味があるのか。
特に近年の政治的な場面で、子どもが主張する手法が痛々しい。反戦メッセージの作文を扇情的に読み上げる中学生とか、環境問題で過激な発言をする少女、彼女に感化されてメッセージを掲げて電柱に上った少年。彼女や彼の本心だろうか。周りの大人がそそのかしているのではないか。大人に利用されていると知らずに演じているのではないか。
私の偏見だと自覚しつつ、子どもを前に出すクラウドファンディングは見送ろうと思った。子どもを出すかどうかも理由だが、こちらも屋根を付けないプランだ。つまり、今回は成功しても、また7年後に同じことを繰り返す。もともと保守修繕は、同じことを地道に繰り返す作業だとは思うけれども、それができないならば、デジタルな資料として残し、解体してもいい。きれいなままの思い出を残したい。
新幹線と飛行機の壁 「4時間」「1万円」より深刻な「1カ月前の壁」
水没した北陸新幹線 「代替不可」の理由と「車両共通化」の真実
東急・相鉄「新横浜線」 新路線のネーミングが素晴らしい理由
がっかりだった自動運転バスが新たに示した“3つの答え”
「びゅうプラザ終了」で困る人はいない “非実在高齢者”という幻想
着工できないリニア 建設許可を出さない静岡県の「正義」
こじれる長崎新幹線、実は佐賀県の“言い分”が正しいCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング