価値ある車両を保存したい。そのために応援してほしい。それで賛同者は集まるだろう。しかし、車両保存はゴールではない。永遠に続く維持補修作業のスタートだ。そこを見据えないと、車両は朽ち果て、初志も応援した人々の気持ちも無駄になってしまう。デジタル映像やVRなどの新たな技術があるいま、ハードそのものを残すことにどれだけ意味があるか。後先を考えない車両保存プロジェクトには慎重にならざるを得ない。
車両保存に限らず、廃駅の保存や活用など、鉄道分野のクラウドファンディングは定着しつつある。観光分野に広げると、自治体の計画や構想にはじめからクラウドファンディングを盛り込んでいる事例もある。企業や自治体は資金を集める手段を持っていそうなものだけど、正攻法ではなく他力本願。打出の小槌だと思っているようだ。
クラウドファンディングサイトにもいろいろあるようで、成功の可能性、社会的意義をきちんと審査しているサイトもあれば、何でもあり、当たって砕けろといわんばかりのサイトもある。鉄道分野に限らないけれど、クラウドファンディングは資金を集める以上は「事業」だ。継続性を考慮して実施してほしい。参加者も一時の情に流されず、将来性を考慮して慎重に参加を見極めたい。成功したところでプロダクト側が持て余したり、参加者が後悔したりという悲劇は避けたい。
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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