「北斗星」の現状に失望と期待 鉄道クラウドファンディング“成功の条件”とは杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)

» 2019年12月23日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

正攻法で説明責任を果たすべき

 このプロジェクトについては、関係者から事情を聞く機会があった。まず、実質的な発起人は小学5年生で間違っていないという。資金を集める枠組みである以上、大人が主催者になる必要がある。だから、大人が子どもを担ぎ上げたように見えてしまったかもしれない。これは表現方法の問題だ。事実はどうであれ、やはり大人が前に出た方がいい。もっとも、プロジェクトは成功しているので、邪推したのは私だけで、多くの人々は真意をくみ取って参加したといえそうだ。

 屋根のない、刹那的なプロジェクトに見える点についても事情を聞いて納得した。かなり特殊な事例で、車両の所有者はJR九州、土地の所有者は福岡市。つまり、他人の物だけに勝手に触れないし、他人の土地に勝手に屋根を建てられない。なんとかお願いして補修させていただく、というわけだ。なんとかお願いするなら屋根を作らせてもらうお願いにすればいいと思ったけれど、あの公園の用地自体に改修、用途変更の構想があるようで、新たな建造物の許可は出ない。期間限定で許可が出ても、取り壊されるかもしれない。

 それでも補修プロジェクトを立ち上げた理由は、将来的にこの客車を買い取って移設したい、あるいは自治体に働きかけて、適した場所に移設してもらいたいからだという。このまま放置して傷みが進めば解体案が浮上する。しかし、市民が大切にしてきたとなれば、解体より移設を優先して検討してくれるだろうと期待している。例えば、中部国際空港に展示されているボーイング787型機のように、空港や駅などが建て替えられるとき、ロビーに置いてもらい、カフェとして営業できたらいい。

 夢物語かもしれないけれど、将来のために解体を避けたい、せめて今から補修だけでもしておきたいというわけだ。なるほど、そこまで聞いて納得し、私もクラウドファンディングに参加した。ただし「それならそうと説明してくれたら、もっと賛同者は集まっただろう」とも思う。私のようなひねくれ者が他にもいて、財布のひもを固く閉じていたかもしれない。

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