クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)

» 2020年01月13日 07時20分 公開
[池田直渡ITmedia]

 では乗ったらどのぐらい強烈なのかといえば、実は意外にも扱いやすい。試乗時にはまだほとんどのスペックが伏せられており、数値を知らない状態だったが、1280キロに272馬力にはとても思えない落ち着いたものだった。激辛でスパルタンなものを想像すると全く違う。

 アシがよくストロークすることと併せて、AWD版のGRヤリスであるGR-FOURの性格はいい意味で落ち着いている。もちろん物理的には相当に速いが、ドライバーを置き去りにしてクルマが亜空間へ向けてワープしていくようなものではなく、いつもちゃんと手綱が効いている感じを強く受ける。トルクは回転数にあまり依存せず、下から上までフラットな印象だ。WRCの過酷な状況でクルマの挙動を管理し続けるためには、必要な特性だと思われる。

 同時に感じるのはクルマの、もっといえばばね上重量の軽さだ。それは加減速だけでなく。路面からの突き上げに関しても感じることができる。突き上げからのボディの遅れ感を感じない。

 ボディ剛性は高い。よじれや遅れを感じないが少し不思議な感覚がある。ガツンとした剛体感はあまりない。ポルシェについて慣用的にいわれる「金庫のような」という硬さとは違う。ある意味、初めて乗って段差を越えた時「うわっ! なんだこの剛性」という新鮮な驚きはないだろうが、かといってこういうクローズドコーズで限界的な領域を試してもボディの捻れによる位相遅れも出ない。なんとも言い表しがたいしなやかな硬さがある。

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