さて、トヨタにとっての大勝負でもあるBセグメントプラットフォームの頭出しとなる、ヴィッツ改めヤリス(ただしプロトタイプ)の試乗会が、袖ケ浦フォレストレースウェイで開催されて、クルマの出来に驚いたというのが先週の話。今回の話は福祉車両のことだ。
まあサーキット試乗会なのに福祉車両の話をするあたりが筆者の変なところだが、トヨタのビジネスのみならず、社会的にもとても重要なことなので、しっかりと取り上げたいのだ。
ヴィッツの後継となるヤリス。袖ケ浦フォレストレースウェイでプロトタイプのお披露目試乗会が行われた
さて、還暦もそう遠くない筆者の周りでは、いまや最大関心事が親の介護だ。筆者の場合、母はずいぶん早くから脳梗塞の後遺症で寝たきりとなり、5年前に他界した。そして今、昭和10年生まれの父が介護施設に入所中である。そこへ入ってもらうまでがまた大変だったのだが、それは本稿とは別の話なので全部端折って、クルマを手放した時の話をする。
実感として、80代の人が生きていくのは、それまでとは違うレベルで制約が多くなる。当たり前にできることができなくなる。クルマの乗り降りも大変だ。それでも自分でクルマを運転できていた頃は、買い物に出掛けたり病院に行ったり、自分の面倒を自分でみることができた。
しかし80歳のとき、筆者が助手席に乗って、父の運転が少し怪しくなっていることを本人に告げた。具体的にはペダルの操作が乱暴になっていた。加速もブレーキも加減ができず一気に踏み込んでしまう。慎重な性格なのでまだマシだとはいえ、この踏み方だと、自分が作り出した加速にびっくりして踏み間違いが起こらないともいえないと思って注意を喚起した。
ヤリスとトヨタのとんでもない総合力
これまで、Bセグメントで何を買うかと聞かれたら、マツダ・デミオ(Mazda2)かスズキ・スイフトと答えてきたし、正直なところそれ以外は多少の差はあれど「止めておいたら?」という水準だった。しかしその中でもトヨタはどん尻を争う体たらくだったのだ。しかし、「もっといいクルマ」の掛け声の下、心を入れ替えたトヨタが本気で作ったTNGAになったヤリスは、出来のレベルが別物だ。
ヴィッツ改めヤリスが登場すると、世界が変わるかもしれない話
TNGAの最後のひと駒であるGA-Bプラットフォームが、今回、ヴィッツの後継車となるヤリスに導入される。筆者は15年のTNGA発表まで、トヨタのクルマをほとんど信用していなかった。TNGA以前と以後ではもう別の会社の製品だと思えるくらいに違う。いまやTNGA世代でないトヨタ車を買うのは止めるべきというのが筆者の偽らざる感想だ。
新型タントデビュー DNGAって一体なんだ?(後編)
多くの人が「新世代プラットフォーム」の名前だと勘違いしているが、DNGAはトヨタのTNGAと同様に、企業まるごとの強靭化計画であり、設計や生産のみならず、部品調達や人材教育まで、ダイハツの企業経営全体を強化する新しい経営思想だ。10%以上の大幅なコストダウンとともに、将来の開発や改造を最初から織り込んで設計されている。その効果は、タントでも福祉車両に見ることができる。
クルマの「つながる」が分からない
「コネクティッドカー」つまりつながるクルマとは何かを、明瞭にスパッと説明できる人はほとんどいない。それはなぜか。音声認識を使って音楽を流せるというようなエンターテインメント要素の話と、車車間通信、車路間通信を使って安全性を向上させようという骨太の話が、混ざって語られるところに混乱の元がある。
SUVが売れる理由、セダンが売れない理由
セダンが売れない。一部の新興国を除いてすでに世界的な潮流になっているが、最初にセダンの没落が始まったのは多分日本だ。そしてセダンに代わったミニバンのマーケットを、現在侵食しているのはSUVだ。
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