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三菱ケミカルHD小林喜光会長「リスクを取らないトップは去れ」三菱ケミカルHD小林喜光会長が斬る(後編)(2/5 ページ)

» 2020年02月26日 05時00分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

ポスドク問題をどうするか

――博士課程に進んだ理系の学生が、ドクターの学位を取得しても職が見つかりにくい「ポスドク問題」が以前から指摘されています。こういったポスドク人材の有効活用策はないのでしょうか。

 ポスドク問題は、私が議員をしている総合科学技術・イノベーション会議(議長・安倍晋三首相)でも議論してもらいました。その結果、ポスドクの学生が希望すれば生活費を支給し、それによって研究に打ち込める環境を作ることにしたのです。生活費を心配せずに、思い切り研究に打ち込めるようになります。やる気のある若手研究者の数をもっと増やしていきたいと考えています。

 その他、博士課程の学生などに新しい研究への挑戦を奨励する表彰制度を20年度中に設けます。さまざまな施策により意欲ある研究者にとって魅力のある環境を提供し、研究強化につなげていきたいと考えています。

 一部の大学では、60歳を過ぎて、ひと昔前から一向に変わらない研究をしている教授にかなりのエネルギーとお金を使っているという実情があります。これからは、AI、バイオ、量子コンピューティングなどの分野を若い人が活性化し、社会的にも求められる学問に転換していかなければならない。学問の新陳代謝が必要なのです。

 企業も同じで、いまは儲(もう)かっている事業も時代が移る中で徐々にフェードアウトしていきますから、次世代へとシフトしていくために事業の「新陳代謝」をいかに進めていくかがポイントになるでしょう。

――会長が指摘した大学生や研究者の「知的ハングリー」を促すためには、研究者同士が切磋琢磨する環境を作る必要がありますね。研究成果を出さずヌクヌクとポスドクでいるようでは、いくら研究費をつぎ込んでも成果は期待できないのではないでしょうか。一方で成果を出すために焦ると、これまた本当の意味で研究成果が出ないという弊害も出てきます。競争的環境と、長期的な視点とのバランスはどう考えるのがベストなのでしょうか。

 日本全体では、若者も競争的環境を避けてしまっている部分があります。そのあたりが、わが国が「(自由主義だが多くの規制に守られた)最も成功した社会主義国家」だといわれるゆえんでもありますが、もう少し競争的な環境を整備すべきです。信賞必罰というと言いすぎかもしれませんが、成果を明確に評価する制度が必要だと感じます。

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