クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

強いトヨタと厳しい日産池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

» 2020年02月25日 07時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

日産

  • 売上高は10兆2000億円で、前年から1兆3742億円のマイナス。
  • 営業利益は850億円で、前年から2332億円のマイナス。
  • 営業利益率は0.8%で、1.9ポイントマイナス。

 日産は減収減益。ちょっと見たことがないレベルの数字だ。1兆4000億円近いダウンは流石に強烈。また利益の減少も凄まじい。営業利益率の0.8%は何というか、おそらくあがきにあがいて水面からかろうじて顔を出した感じ。もし外部の人間が血も涙もない計算の仕方をしたら赤字に沈みかねない結果だ。7年近く開発が止まっていたと思われる新世代シャシーを再開発し、ラインアップを立て直せるかどうかにかかっている。

 日産は昨年の本決算で、22年までに基幹車種の全て、20車種をリニューアルすると説明していたが、売上も利益もこれだけダウンすると、その計画を進める資金が足りるのかどうかが危ぶまれる。ルノーとの関係がもつれている今、外部からの新たな資金援助も一筋縄ではいかないだろう。頑張ってほしいという言葉が精一杯だ。

スバル

  • 売上高は3兆3600億円で、前年に1995億円のプラス。
  • 営業利益は2200億円で、前年に245億円のプラス。
  • 営業利益率は6.5%で、0.3ポイントのプラス。

 スバルは増収増益。この市況下では極めて良好だといえる。トヨタを別にすれば一番の勝ち組だ。ピークで17.5%、一昨年は11.7%もの利益率があったのだが、それはそれで異常な数字だった。当然そんな利益率は長続きするはずはなく、落ちるのは当然で、理想である8%程度で止まらずに、昨年6.2%まで落ちたことを注視してきたが、今回0.3%とは言え反転して上げ始めたことも朗報だ。あとはこれをステップバイステップで上げていかれるかどうかがポイントになるだろう。

スズキ

  • 売上高は3兆5000億円で、前年から3715億円のマイナス。
  • 営業利益は2000億円で、前年に1244億円のマイナス。
  • 営業利益率は5.7%で、2.7ポイントマイナス。

 スズキは減収減益。ちょっと落ち幅が大きい。営業利益率も理想値から下回り始めた。少し気になる。スズキの場合原因はハッキリしており、インドの景況悪化が長引いていることが原因だ。

 特に金融システムの問題が大きい。インドは元々与信管理が杜撰(ずさん)だったところへ不景気で貸し倒れが多数発生し、驚いた金融機関が急に貸し出し基準を厳格化したために、経済全体に資金が回らなくなった。恐らく時間経過とともに妥当な与信管理体制が確立されると思われ、そうなれば景気の循環でまた好景気になるだけの成長余地はあるだろう。ただシステムの立て直しにどの程度かかるのかはまだ何ともいえない。

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