全体を見て、とにかくこの逆境下で強さに圧倒されるのがトヨタで、ちょっと言葉を失う厳しさに直面しているのが日産だ。スズキとマツダは日産を見るとまだ救われるが、下を見て安心していていい状況とは思えない。概要としては各社そろって、程度の差はあれど逆境である。
各社の通期売上高予測
各社の通期営業利益予測
ではどうしてそんなことになっているのか? それはトヨタの資料を見ると見えてくる。日本、北米、アジアの3地域で販売が落ち込んでいる。マツダも日、米、中、その他で落ちている。
トヨタの地域別の推移。破線が販売台数の推移、棒グラフは地域別営業利益の推移(トヨタ決算資料より)
ちょっとマーケット特性が違うスズキはどうなのかと見れば、日、欧、印、その他の全てがダウン。ほとんど販売していない北米で増えても影響は誤差だ。
要するに世界中でクルマが売れていない。各社の自己分析では、国内に関しては台風の影響を挙げている。サプライチェーンが寸断されたという状況はそれなりに厳しかったかもしれないが、基本的に国内マーケットは微減のトレンドが続いており、これからも大きく伸張するとは考えにくい。
インドとASEANは市況が悪い、しかも回復が遅れている。そこはまあ普通に考えて循環性のものなので、いずれ回復するだろう。しかし真の問題はやはり中国マーケットだと思う。
- 暴走が止まらないヨーロッパ
英政府は、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売を、ハイブリッド(HV)とプラグインハイブリッド(PHEV)も含め、2035年に禁止すると発表した。欧州の主要国はすでに2040年前後を目処に、内燃機関の新車販売を禁止する方向を打ち出している。地球環境を本当に心配し、より素早くCO2削減を進めようとするならば、理想主義に引きずられて「いかなる場合もゼロエミッション」ではなく、HVなども含めて普及させる方が重要ではないか。
- 2020年の中国自動車マーケット(前編)
世界の自動車販売台数の3分の1を占める中国で変調が起きている。中国マーケットで起きていることをちゃんと押さえることが第一。次いでその原因だ。そしてそれらが20年代の自動車産業にどんな影響を与えそうなのかを考察してみよう。
- トヨタとスズキ 資本提携の構図
トヨタ自動車とスズキは資本提携を発表した。その背景として大きいのがインド。スズキのインド戦略を振り返るとともに、提携による効果はどこにあるのかを探る。そして、トヨタとスズキとの提携の本丸は、インドでの工場共同設立にあるのではないか。
- ホンダの決算 バリエーション7割削減の意味
増収減益ながら、欧州の工場閉鎖など減益は一過性となるホンダの決算。そして来期に向けては、無駄な派生車種を3分の1に削減し、基礎設計を共通化する「ホンダアーキテクチャー」の導入も進める。
- 完敗としか言いようがない日産の決算
ズタズタの決算内容だった日産。一つの要因は、北米で販売促進費用(インセンティブ)をつぎ込んで売り上げを伸ばそうとしたことにあるのではないか。対策として、22年にはモデルラインアップの半数を電動化車両にするというがバッテリー供給は大丈夫か。20車種の新型を出すというのも、短期間で作られる新車は大丈夫なのか?
- マツダの決算 またもや下がった利益率の理由
売上高は増収だったが利益面の落ち込みが激しいマツダの決算。北米と中国市場の不振が響いた結果だ。今後に向けて、販売店改革とパワートレーンの刷新を進めるが、これが北米市場で実を結ぶかどうかが焦点となる。
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