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「コスパ」ではない体験を 入社前に1年間の“海外武者修行” 矢崎総業の「アドベンチャースクール」が生まれた背景これからのキャリアは「カニ歩き」?(1/3 ページ)

» 2020年03月09日 05時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

 昨今は人手不足もあり、採用に苦労する企業が増えてきた。これまでは「選ばれる」という傾向が強かった学生側が「選ぶ」側に回ることになり、企業は応募者を集めることに苦労するだけでなく、せっかく内定を出しても辞退されてしまうケースも多い。

 リクルートキャリアの「就職白書2020」によると、企業が2020年卒採用において、採用予定数を「100」としたときの「内定出し人数」は「175.0」。うち「内定辞退人数」は「83.1」と、単純計算で全体の内定辞退率は半数近くの47.4%までのぼる。さらに、厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」によると、大卒者の3年以内離職率は長らく3割近くで推移している。つまり、入社してもらっても3年を超えて働いてくれる人は7割程度なのだ。

リクルートキャリア「就職白書2020」

 企業側が採用難にあえぐ中で、学生側も難しい状況が続く。「学生」とはいいつつも、企業の採用活動が早期化する中で、最近では大学年次の早いうちからインターンに参加するなど、学業に打ち込めない状況になりつつある。さらに、働き始めれば日々の業務に忙殺され、自己研さんのために勉強し続けられる人も少ないだろう。企業が国際的な競争にさらされつつある今、こうした「目の前のこと」にあくせくさせられる人が多くなってしまっては、近視眼的なものの見方しかできなくなり、勝ち抜くことはさらに難しくなっていく。

 こうした、ある種“負のスパイラル”ともいえる状況に対して一石を投じる企業がある。自動車部品の製造などを手掛ける矢崎総業(東京都港区)だ。同社は「アドベンチャースクール」という名称で、内定者を中心とした希望者に対して「入社前1年間」に“海外武者修行”の機会を提供している。どういった制度で、なぜこうした機会を提供しようと考えたのか。

厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」
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