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新日本プロレスのプロ経営者・メイ社長が「リストラせずにV字回復できた理由」――必要なのはコストカットよりも“人材とブランドの育成”セルリアンブルーのプロ経営者【後編】(2/6 ページ)

» 2020年03月18日 07時30分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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「大人リカちゃん」が大ヒット

――組織を再構築して、トップライン(売上高)を伸ばすには、どのような考え方が必要なのでしょうか。

 トップラインを伸ばすために必要なのは、その企業が持つブランドの知名度です。特に昔からあるブランドの知名度には、大きな価値があると思っています。新日本プロレスも一時は経営危機に陥りましたが、知名度は高いですよね。知られているだけで価値があります。その知名度を捨てるのではなく、生かすことが必要です。

――タカラトミーでは、どのようにしてV字回復を実現したのでしょうか。

 社長に就任した当時、タカラトミーで困っていることは何かと聞くと、1つはリカちゃん人形の売上低迷だと言われました。ゲームやApple製品などの影響で、子どもが人形と遊ぶ時間が短くなり、リカちゃんの低迷は20年以上続いていました。しかし、私はリカちゃんをそのまま見捨てるのではなく、立て直すべきだと主張しました。

 なぜなら、リカちゃんの知名度がものすごく高かったからです。ある時点の調査では、日本のキャラクターの中で最も知名度があったのはハローキティの98%で、リカちゃんはその次に高い97%でした。これほど知名度の高いキャラクターを何もせずに放置することは考えられませんでした。

 私が発想したのは、ターゲットを大人に振ることです。そこで発売したのが、大人の女性が楽しめる新ブランドの「LiccA」と「ビジューシリーズ」です。ドレスではなく普通の大人の女性が好むような服を用意して、値段を高価格帯に設定しました。つまり、大人が見て楽しみ、写真を撮ってインスタにあげたくなるようなコンセプトにしたのです。すると、購入する層が60代まで広がると同時に、大人が遊んでいるのを見た子どもも欲しくなって、大ヒットにつながりました。

photo 大人の女性が楽しめる新ブランドの「LiccA」(タカラトミーのWebサイトより)

――1967年に誕生したリカちゃんを、再度ヒットさせることができたのは、知名度があったからということですね。

 ブランドと知名度があれば、復活できます。約50年前のリカちゃんを再びヒットさせることができたのだから、トミカも、プラレールも、トランスフォーマーもヒットさせることができると主張して、V字回復ができました。

 もちろん、社内の抵抗はありましたよ。マーケッターは、新商品を開発してヒットさせたいと考えますから。それでも売り上げの柱を諦めるのではなく、新たな発想で伸ばすことが大切ではないでしょうか。

photo 「ビジューシリーズ」(タカラトミーのWebサイトより)

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