#SHIFT

新日本プロレスのプロ経営者・メイ社長が「リストラせずにV字回復できた理由」――必要なのはコストカットよりも“人材とブランドの育成”セルリアンブルーのプロ経営者【後編】(4/6 ページ)

» 2020年03月18日 07時30分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

日本の課題はオーナー企業の多さと後継者不足

――プロ経営者として、日本企業の課題をどのように見ていますか。

 課題はたくさん感じていますが、あえて私が考えるトップ3を挙げてみます。まず1つ目は、多くの日本企業の採用が、新卒だけに頼っていることです。新卒を採用するのは、真っ白な人を入れて、その人を会社の色に染めるわけですよね。そうすると、その会社にある色に染まるだけで、会社としては考え方の進化がありません。

 外資系の企業では、この事情は異なっています。私が副社長を務めた日本コカ・コーラは、新卒で採用する人は1人もいません。全員が中途採用です。その理由は、異色の考え方を持つ社員をあえて会社に入れたいからです。日本の企業が中途採用に抵抗があるのは、私はもったいないことだと思っています。

 2つ目は、日本ではオーナー企業が多すぎることが課題だと考えています。オーナー企業がいい、悪いということではなく、海外に比べると多すぎるのです。しかも、オーナー企業は後継者が不足しています。

――オーナー企業の多さは、日本と海外では大きな差を感じますか?

 日本の上場企業を見ると、53%が同族企業です。もちろん海外にもオーナー企業はたくさんあります。ただ、統計はありませんが、日本のように半分以上を占めることはないでしょう。

 後継者不足については、2016年の帝国データバンクの調査によると、全国にオーナー企業が43万社あり、そのうち71%にあたる29万社が後継者不足です。後継者がいないと、投資家はどう思うでしょうか。「経営者にもしものことがあったら、この会社は大丈夫だろうか」と思いますよね。

photo 日本にはオーナー企業が43万社ある。そのうち71%にあたる29万社で後継者がいない状況だ(「全国オーナー企業分析」帝国データバンクのWebサイトより)

 コカ・コーラに在籍しているときにすごいと感じたのは、本社社長が世界各地の拠点を回るときに、5人前後いる副社長を必ず連れて行くことです。それは自分の後継者はこの5人の誰かになると宣言しているようなものです。副社長は社長と同じブリーフィングやプレゼンを受けていますから、社長に明日何かあっても、会社をすぐに引き継ぐことができます。

 日本ではそんな準備はしていないですよね。後継者不足は、日本企業の深刻な問題だと感じています。

photo 日本コカ・コーラでは新卒では1人も採用せず、全員中途採用だ(写真提供:ゲッティイメージズ)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.