企業がブラック化するのも、そこから脱するのも、究極的には経営者の決断と考えによるものだ。良くいえば「意思決定が早い」「強力なリーダーシップ」という資質も、行き過ぎたり方向が違ったりすると、「ワンマン経営」や、「独裁者」につながることもある。そのような会社では経営者に批判的な態度はとれず、場合によっては建設的な意見さえも言えず、経営者と価値観を共有できない従業員には居づらい環境になるだろう。
筆者自身が「ブラック企業」という言葉を意識したのは、掲示板サイト「2ちゃんねる」上において、自分が勤めていた会社がブラック企業として扱われていたのを見たときだ。「へー、ウチってブラック企業だったんだ……」と、ひと事のように感じていたことが思い返される。よほど意識的に悪意を持って運営されているのでなければ、「ブラック企業」との評判は、内部の人間にとっては「そうなのかなあ……」程度でしかないようだ。なぜなら、彼らにとってはブラックである状態が日常であり、特段疑問を持つ機会もないからだ。
最も恐ろしいのは「思考停止」である。すなわち、「この業界の会社ならどこでもやっている」「ウチは昔からこうだった」といった無批判な姿勢で、違法状態を看過したり、改善する機会を逃しているのだ。そのような思考の延長線上には「ウチの業界/会社は特殊なんだ!」、だから「変革するのは困難/意味がない」などという、これまた思考停止のなれの果てが待っている。
思考停止組織には、「何を言っても変わらない」「何をしてもムダ」という覇気のない雰囲気が全体的にまん延している。こうなると、必然的に全体のマインドが後ろに向き、受動的になってしまう。世の中を変えたいといった前向きな意欲をもって入社してきた従業員にとっては、十分に離職の理由になるだろう。
また、「休暇をとらせない」「会社主催の飲み会やイベントは強制参加」……といったことをやっている会社は、「手段が目的化」してしまっている。休暇とは本来、リフレッシュして仕事の鋭気を養うためにあるものだが、それをとらせずに働かせればかえって効率は悪くなる。また親睦のためのイベントなら、無理に全員参加の行事とせず、従業員にアイデアを出させればいいだけの話である。いずれも、モチベーションやモラルが低下する要因となる。社内だけで済むうちはまだいいが、万一労基署の調査が入ってからでは手遅れだ。
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