人材派遣業界が本当の意味で社会から認められる存在になるためには、これら悪質な事業者を一掃しなければなりません。そして、不本意型派遣社員へのサービスの在り方を変える覚悟が必要です。派遣事業者の真の敵は、業界の中に潜んでいます。
不本意型派遣社員の比率は、調査によってまちまちです。仮に「3割」だとしたら全雇用者のおよそ0.8%、半分だとしたら全雇用者の1.2%ほど存在することになります。比率で見ると小さいですが、141万人の3割だとしても40万人以上はいる計算になります。世界各国を見ても、派遣社員の比率はおおむね3%前後です。それは派遣というサービスの特殊性を考えればある意味自然なことであり、規模拡大ばかりを考えて全雇用者に占める派遣社員の比率を増やすことを目指すのは無意味です。
本来目指すべきは、不本意型派遣社員をゼロにし、本意型の比率を100%にすることです。派遣以外にも多様な選択肢を提供し、社会の中に本意型の働き手を増やして行くことは、「人材サービス」を提供するあらゆる事業者が取り組むべき最重要課題だと考えます。
かつて「ハケンの品格」が放映された13年前、日本はまだ、リーマンショックも東日本大震災も新型コロナウイルスも経験していませんでした。それら大きな苦難を経験しつつ、新たな時代を迎えている現在。働き方改革が進み、人々の価値観は多様化し、AIやロボットなどによる業務の自動化が促進される中で、「人材サービス」が“歩むべき道”とはどういうものなのでしょうか。次回はそんな観点から考察しつつ、当連載を総括したいと思います。
1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業。テンプスタッフ株式会社(当時)、業界専門誌『月刊人材ビジネス』などを経て2010年株式会社ビースタイル入社。2011年より現職。複数社に渡って、事業現場から管理部門までを統括。しゅふJOB総研では、のべ約3万人の“働く主婦層”の声を調査・分析。研究・提言活動では、『ヒトラボ』『人材サービスの公益的発展を考える会』を主宰し、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK『あさイチ』など、メディア出演・コメント多数。男女の双子を含む4児の父。
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