木製腕時計をつくった会社に、なぜ3000万円超の資金が集まったのか北欧スタートアップ「ヴェアホイ」(2/5 ページ)

» 2020年05月26日 08時03分 公開
[小林香織ITmedia]

75歳の巨匠と若手起業家のコラボレーションが話題に

 大学院を卒業して間もなく、一般企業に就職せず、1人でヴェアホイを創業したヤーヌス氏。ビジネスアイデアが生まれたきっかけは、大学院在学時に執筆したデンマークの時計と家具デザインの歴史を扱った修士論文だった。

 「研究を進める中で、デンマークのデザインのルーツである木材は、家具などでは親しまれていますが、腕時計にはほとんど使用されていないと気付き、“木材”と北欧の哲学である“ミニマリズム”を融合させた、まったく新しいコレクションを作ってみたいと考えました。

 まずは趣味のプロジェクトとして作り始めましたが、デザインの人気ぶりを見て、これは本格的なビジネスとして通用すると、すぐに察しました」(ヤーヌス氏)

桜の木を使った木製腕時計

 首都コペンハーゲンから電車で1時間強、シェラン島の北西部にある自然豊かな都市・ヴェアホイで生まれ育ったヤーヌス氏は、生まれ故郷の名前を借りて、27歳の若さで自身のブランドを立ち上げた。といっても、大学院を卒業したばかりで資金の余裕はない。そこで彼が目を付けたのがクラウドファンディングだった。

 「当時の私はアイデアに自信はあったものの、十分なスキルはありませんでした。そこで、自分と50歳ほど歳の離れたデンマーク・デザイン界の巨匠、ボー・ボンフィス氏にコンタクトを取ってみることに。

 彼は75歳で現役のデザイナーを退いていましたし、数々の偉大な功績を残しています。きっと答えはNoだろうと思いましたが、勇気を奮い起こして電話をかけました」(ヤーヌス氏)

ヤーヌス氏はデザイン界の巨匠、ボー・ボンフィス氏に連絡した(撮影:コーリング 優香)

 偶然にもそのとき、2人は自転車で5分の距離にいたことから、ヤーヌス氏はすぐさま彼の元へ。コンセプトを伝えると、ボンフィス氏はすぐに興味をそそられたという。そこからミーティングは8時間続き、1年半の歳月を経て、ようやくヴェアホイ初のオリジナルデザインが完成。アメリカのクラウドファンディングサービス「キックスターター」で発表したところ、世界38カ国から10万ドル(約1074万円)を超える支援が集まった。

 「私たちはデザインに一切妥協をしませんでした。心から納得するまでモデルチェンジを重ね、唯一無二のヴェアホイらしさを表現できたからこそ、これほどの反響を得られたのだと思います」(ヤーヌス氏)

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