業界で現場の三密状態が最も懸念されたアフレコと呼ばれる声優による収録もそんな一つだ。収録の現場や回数を細かく区切るなど早くも対策を取り始めている。これまで日本のアニメ制作は小さな業界だからこそ柔軟性があり、対応力も高かった。今回も同様に、短期間でビジネスの回復力を発揮するかもしれない。
そんなアニメ業界の今後を支えると期待されるのが、映像配信プラットフォームである。外出自粛のなかで、需要が急拡大した数少ないエンタメにデジタル配信がある。動画配信の契約数は急伸している。
動画配信は20年代のエンターテインメントの主力メディアとされる。その急成長は新型コロナ以前からの傾向で、むしろ息の長いトレンドだ。そうした動画配信のキラーコンテンツの1つが、新規ユーザーの獲得に力を発揮し、視聴時間も長いアニメである。日本国内だけでなく、海外で人気が高いのも強みだ。
定額見放題サービスで世界最大のNetflixは、直近でも『攻殻機動隊 SAC_2045』や『日本沈没2020』を投入するなど、日本アニメの資金投入を拡大している。
Netflixばかりが注目されがちだが、先頃鳴り物入りで米国にてスタートしたワーナーメディアのHBO maxにもアニメが多く並んだ。同グループの日本アニメを専門にするクランチロールは、オリジナル日本アニメ作品への出資を打ち出す。
配信プラットフォームは世界規模で激しい競争を繰り広げ、デジタル配信の拡大が人気の高い日本アニメへの需要をさらに大きくする。10年代を通じた日本アニメの人気と周辺市場の拡大は、グローバル配信に乗ることで実現されたが、こうした好循環がまだまだ続くというわけだ。
世界市場のビジネスを見据えることで、アニメの製作資金も大きくなる。近年上昇傾向の制作費をカバーし、制作スタッフの就業環境の改善につなげる。それは作品のクオリティーや競争力を引き上げ、市場はさらに拡大する。
ケースAを、楽観的過ぎると考える業界関係者は多いかもしれない。新型コロナの影響を考えただけでも、問題は山積みだからだ。三密を避けるスタジオ環境作りや、より時間と手間のかかるアフレコ体制など制作費が上昇する要因は多く、収益回収水準を超えられない作品が増える。それは動画配信の資金だけでカバー出来ず、アニメ制作本数が大きく減る可能性は高い。
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