#SHIFT

窓口対応で土下座まで……「カスハラ」対策、“理不尽なおもてなし”から解放されるか河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)

» 2020年06月12日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

「おもてなし」でごまかさなかった、スカイマークの方針

 しかしながら、日本では感情労働が「おもてなし」に都合よくすり替えられてしまっているのです。本来であれば、従業員のサービスや感情コントロールの訓練と教育を行ったり、感情労働分の賃金を上乗せしたりするなど、お客さまを満足させるための投資が欠かせないのに、「おもてなし」という言葉を使うことで、感情が切り売りされ、「決してタダじゃないサービス」が、タダにされてしまっています。

 2012年にスカイマークが、「スカイマーク・サービスコンセプト」という冊子を座席のシートポケットに入れ、顧客からのクレームで回収するという事態に至ったときもそうでした。

 冊子には、

  • 荷物の収容はしない
  • 従来の航空会社の客室乗務員のような丁寧な言葉使いを当社客室乗務員に義務付けていない
  • 安全管理のために時には厳しい口調で注意をすることもある
  • メークやヘアスタイルやネイルアート等に関しては「自由」
  • 服装については会社支給のポロシャツまたはウインドブレーカーの着用だけで、それ以外は「自由」
  • 客室乗務員は保安要員として搭乗勤務に就いており接客は補助的なもの
  • 幼児の泣き声等に関する苦情は一切受け付けません
  • 地上係員の説明と異なる内容をお願いする際は、客室乗務員の指示に従うこと
  • 機内での苦情は一切受け付けません
  • ご理解いただけないお客様には定時運航順守のため退出いただきます
  • ご不満のあるお客様は「スカイマークお客様相談センター」あるいは「消費生活センター」等に連絡されますようお願いいたします

 などと書かれ、大バッシングが起き、メディアもスカイマークをたたきまくりました。

 でも、これでいいのです! 当時、私はコラムでも取り上げ、「オ〜、よくぞここまで言い切った!」と褒めたたえていましたが、このサービスコンセプトこそが搭乗料金の値下げにつながっているというロジックが成立するわけですから、全く問題ないのです。

スカイマークのサービス方針は問題なかった(画像はイメージ)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.