クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ようやくHVの再評価を決めた中国池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2020年06月29日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

中国マーケットの未来

 ということで、ここからしばらくは、中国でHVが強い追い風を受けることになる。当面の狙いは純内燃機関(ICE)車両の段階的削減であり、それらがHVに置き換えられることになる。

 そうした時代背景の中で追い風が吹くのはどのメーカーかといえば、当然のごとくトヨタ。そしてホンダとe-POWERの日産ということになるだろう。

 しかし今年の年頭に書いた記事の通り、いやあの時以上に中国のカントリーリスクが高まっている。今から中国でビジネスが大きくなることは喜ぶべきことかどうか分からない。

 米国は、中国共産党による香港への国家安全維持法の押し付けに警告を出し続けてきたが、共産党はそれを強硬に推し進めてしまった。その結果米国は制裁として香港自治法案の制定に入り、すでに上院が同法案を可決した。下院が可決し、大統領がサインをすれば成立するが、これまでの流れからみれば、ほぼ間違いなく成立するだろう。

 同法案では、香港の自治権干渉に関わった中国当局者の個人資産凍結だけでなく、制裁対象者と取引した米国の金融機関にも制裁が加えられることになっている。要するに間接的に加担するヤツも許さんぞということだ。さらにトランプ米大統領は、このまま進めば次のステージでは、香港に認めて来た優遇措置を撤廃すると表明している。

 香港の優遇措置とは何かといえば、香港を、中国とは制度が異なる自由貿易国とみなして、米国の銀行に香港ドルの取引を認めていることだ。もし香港はすでに自由貿易国でなく中国本土と一体であるとみなした場合、香港の金融機関は、中国本土の銀行と同様に、米国の銀行から自由に米ドルを買うことができなくなる。小額の個人換金なら別だが、大口の換金マーケットは中国全土で、香港だけなのだ。それは香港が自由経済圏だという見方があったからこその話である。

 これまで中国で営業してきた外資企業は、人民元→香港ドル→米ドルと換金することで、利益を自国に持ち出してきたが、香港の優遇措置が失われると、この窓口が塞がれ、中国で上げた利益は実質的に中国国内でしか使えなくなる。人民元を人民元のまま使わなくてはならないからだ。

 グローバルな取引では、人民元は通貨として通用しないので、グローバル企業にとっては、米ドルへの換金ルートを閉鎖されることは中国でビジネスをする意味が失われることになる。

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