クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ようやくHVの再評価を決めた中国池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2020年06月29日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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 香港での為替売買の停止は貿易の停止を意味する。そうなると中国国内からのサプライチェーンの事業継続も怪しくなってくる。特にこれまで、中国国内で販売するEVやHVは中国製のバッテリーを使えと共産党が横車を押してきていた関係で、世界のバッテリー供給のシェアは相当数が中国頼みになっている。

 これらが果たしてどうなるのか予断を許さない状況なのだ。というあたりで再び呆れるのだが、トヨタは中国以外の地域で売るHVのバッテリーはパナソニックを採用している。他社が軒並みCATLやBYDなどの中国製バッテリーを採用しているのに対して、トヨタは用心深く中国製のバッテリー使用を中国国内販売用のみに留めている。トヨタだけはいざとなれば尻尾を切って逃げられる。中国国内のサプライチェーンと一蓮托生になってないのだ。

2017年に、汎用角形バッテリー事業の協業についての調印を行ったトヨタの豊田章男社長と、パナソニックの津賀一宏社長

 さて、全体を振り返ろう。中国での規制の変更でどうやらHVが勢いを盛り返しそうなことが見えてきた。しかしながらその中国は米中経済戦争の激化で金融の手厳しい締め付けが秒読み段階に入っている。HVの再評価は、トヨタ、ホンダ、日産にとって、大きなチャンスでもあるが、地雷である可能性も無視できないほどに膨れ上がっている。われわれはしばらく事態の推移を見守るほかにない。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答を行っている。


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