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「何でもスクショ」な若者と「いつでも電話」中高年の意外な共通点――日本特有の“使えない人材”とは“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2020年07月21日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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現地ニーズを完全に見誤った日本メーカー

 前者の言葉は、相手と自分が同じ価値観を持っていることが無意識的に大前提となっている。相手が望むことは自分が望むことと同じとは限らないという基本的な価値観を持っていないと、マーケティングにおいても大きなミスをしてしまう。日本メーカーは、新興国向けの製品戦略で韓国メーカーや中国メーカーに完敗したが、最大の理由は、現地消費者のニーズを完全に見誤ったからである。

 日本人が家電やAV機器に求めるものは、相手も求めていると勝手に信じ込み、綿密なマーケティングを実施しなかったことから、現地ニーズを製品開発に生かすことができなかった。これに対して韓国や中国のメーカーは、自分と相手が違うことを前提に徹底した調査を行い製品開発に生かした。

 スクショを飛ばす若者も、電話しかしない中高年も、相手を理解するつもりがまったくなく、これでは企業活動そのものが成り立たない。

 諸外国にもこうしたスキルの低い社員は存在しているが、あまり問題にはなっていない。例えば米国企業であれば、社員の採用や解雇は直属の上司が権限を握っていることが多く、数回注意してもスクショしか飛ばさない社員は、翌週には机がなくなっている可能性が高いだろう。ところが日本の場合、上司にこうした権限はなく、原則として社員を解雇することはできないので、上司の指示をどれだけ無視したところでクビになることはない。

 電話しか使えない威張っているだけの中高年社員は、若い時は、上司から見て「使えない」社員だった可能性が高く、会社にいる限り、全社的な生産性を下げ続ける。そして、スクショしか飛ばせない社員にもまったく同じことが言える。日本独特の雇用環境がスキルアップに対するモチベーションを低下させている可能性があり、実は根が深い問題なのだ。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。


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