クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

トヨタの大人気ない新兵器 ヤリスクロス池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2020年07月27日 07時02分 公開
[池田直渡ITmedia]

スタイルと着座姿勢

 さて、ヤリスクロスだ。全体のスタイルは、上背があるせいもあって、ヤリスより立派で、高級感がある。基本的な形は、4つのタイヤを外に押し出して、踏ん張りを効かせ、前後のホイールハウスの上を梁(はり)でつなぐ建築的スタイルだ。

 両サイドを強く絞り込んだフロントマスクは、良く言えばクール、悪く言えば無表情。ボディ全体の面構成は最近のトヨタらしく、少しヌメリ感のある曲面という成り立ちだ。まあ、今時の都市型SUVとして悪くない。

 運転席に座ってみると、シートは最近のトヨタ水準。改善余地はまだまだあるが、昔のトヨタのシートに比べたら長足の進歩なのは事実である。ちなみに、詳細は未発表ながら、ヤリスクロスで初採用になるワンモーター式のパワーシートがグレードによって選べるらしい。重量的にも価格的にもコンパクトクラスへの装備を可能にするもので、家族で1台のクルマを使う場合などは非常にありがたいだろう。ただインターフェイスとなるスイッチのストローク代がやたらと大きく、どのレバーでどれが動くのかは直感的に分かりにくい。自己所有なら一度覚えれば済む話だが、レンタカーなどでは戸惑う人も出そうだ。

このクラスに採用すべく開発された1モーターの電動シート。一番前の逆三角形のスイッチがシートの前後、真ん中が上下、後ろがリクライニングの調整用だ。またドアがサイドシル全体を覆うようにかぶさるので、泥道を走行した後、服の裾を汚しにくい配慮がされている

 前席に着座してペダルオフセットを見る。こっちもヤリスとほぼ同じ。それでも努力は認めなければならない。ヤリスよりもタイヤ径が上がっているので、本来はホイールハウスの張り出しは大きくなるはずだが、ドライブシャフトの角度をつけることでホイールセンターを8ミリ前へ出すことで、ホイールハウスの車室への侵入を防いでいる。チーフエンジニアによれば「ホイールハウスの拡大は前方で取りました」とのことだ。

 後席は流石に広々とはいえない。膝前のスペースもミニマムだが、シートそのものの出来は良い。特に座面の前上がり角がちゃんとしていて、クッションの沈み込みと合わせて、座った姿勢が安定している。

だいぶ改善されたとはいえ、まだ完璧とはいえないペダルオフセット
空間は広いとはいえないながら、シアター式に高さを上げ見晴らしに配慮したリヤシート。ヤリスより高いルーフのおかげだ

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