クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

トヨタの大人気ない新兵器 ヤリスクロス池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2020年07月27日 07時02分 公開
[池田直渡ITmedia]

走りの味

 走り出し、タイヤのひと転がし目に段付き感はなく、制御しやすいのは合格。直進安定性は矢のようにとはいかないが、自然で好ましい。ステアリングも違和感がない。全体の進歩から見ると、ブレーキだけはもう少しかっちりしてもいいと思うが、踏力がちゃんとかけられないユーザーを想定すれば、こういうストローク依存のブレーキになるのは止むを得ないかもしれない。

 ヤリスは軽量を生かして、サーキットでかなり生き生きと走ってくれたが、ヤリスクロスはそういう意味では鮮度、あるいは感度が低いともいえるだろう。ただしそれは必ずしもネガティブな話ではなく、鷹揚(おうよう)で優しいリズムを持っているということでもある。ビビッドに走るクルマは楽しいが、ビビッドに走るクルマだけが楽しいわけじゃない。まあファン to ドライブの形が違うということだ。

 ヤリスと比べると“のどか系”なのだが、少し前のトヨタ、例えば先代のカローラのような不感症タイプではない。徹頭徹尾どアンダーで気持ちがどんよりしてくるというのが、トヨタのダメなクルマの特徴だったけれど、ヤリスクロスは、ちゃんと操作した通りに動いてくれる。運転に集中していちいち反応が敏感で楽しいことを求めるならヤリスにしておいた方がいいが、むしろ多少の雑な扱いを許してほしいならヤリスクロスだろう。まあ言い方は少し極端だが基本的な性格分けはそういう感じだ。

基本デザインはヤリスと共通ながら、フェイシアなどの変更が加えられたインテリア

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