大企業(従業員1000人以上)では、仕事での幸せ実感が最も低い層はむしろ転職意向がやや低下する傾向が見られた。不幸せ実感の最も高い層においても同様の結果となった。
なぜ企業一般と大企業の従業員で違う傾向が出たのか。井上さんは日本の大手の職場に特有な“しがみつき”が背景にあると推測する。「給与も高い大企業で終身雇用を前提に働いていると、辛くても『今辞めるのは損だ』と考えてしがみつかざるを得なくなる。(好待遇な)大企業への一種の『ぶら下がり』だ」。
こうしたさまざまな課題を孕む日本的な人事施策の中でも、従業員の幸せに最も強い影響をもたらしたのが「組織目標の(従業員個人への)落とし込み」。上司や管理職が従業員と話し合って個人目標と会社組織の目標をすり合わせ、双方納得のいく昇給・昇格の基準を定める、というものだ。
年功序列制度の見直しなどから、近年は目標管理制度(MBO)などという名称で取り入れている日本企業も多い。この人事施策が職場でしっかり実行されている人ほど、どの年代でも仕事での幸せ度は高く、不幸せ度を下げる強い因子にもなった。
人材業界では以前から意義が強調されてきた、こうした上司と部下との目標のすり合わせ作業。ただ井上さんは「多くの日本企業では(事実上)おざなりになっている。実施率は低いのではないか」と指摘する。
「MBOは日本に移植された理念だが、本来は『従業員が自分で目標を立てて、上司と“握る”』物だった。でも今は上から目標が落ちてきて書面に記すだけの、単なる評価ツールになっている。日本企業では(従業員による)自己決定の部分が抜け落ちてその本質から遠ざかり、機能不全に陥っていると言える。企業ごとに適した人事の仕組みを作っていくべきだ」(井上さん)。
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