日本アニメは本当に「ガラパゴス」なのか――待ち受ける真の危機に迫るジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(5/5 ページ)

» 2020年08月03日 08時00分 公開
[数土直志ITmedia]
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日本の制作側も「越境」を

 日本スタイルの世界への広がりは、日本カルチャーの成功と見える。しかしむしろそれは日本の厳しい未来を予感させる。日本だけと思われていたスタイルが日本の外でも実現できることで、日本の優位性は薄れ、競争が増す。

 日本アニメの独自性は失われることはないが、極端な話、日本が競争で負けてそのスタイルだけが世界に残ることだってあるかもしれない。日本アニメは成功したからこそ、危機にある。

 それでは日本アニメの未来はどこにあるのだろう。日本アニメのスタイルが国境を越えるなら、日本で作っている側も国境を越えればいい。日本アニメスタイルを作る人たちのコミュニティーで、国境を意識せずに作品を作ることは出来ないだろうか。

 日本アニメは海外の才能・文化を受け入れ、作る場所も日本に限定しない。国際共同製作には失敗が多いとしたが、目指す方向性にぶれがないコミュニティーであれば、グローバルな共同作業は可能なはずだ。

 映画の都ハリウッドの成功は、米国文化の拡散にあった。そこから世界の才能がハリウッドを目指し、ハリウッド文化の多くを外国人が受け継ぎ、作りだす。日本アニメも国境を越えた多くの才能とつながることで強く、豊かになっていくはずだ。

著者プロフィール

数土直志(すど ただし)

ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。アニメーションを中心に映像ビジネスに関する報道・研究を手掛ける。証券会社を経て2004 年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立。09年にはアニメビジネス情報の「アニメ! アニメ! ビズ」を立ち上げ編集長を務める。16年に「アニメ! アニメ!」を離れて独立。主な著書に『誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命』 (星海社新書)。


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