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車内やベンチでまだ仕事? 首都圏の駅にシェアオフィスが続々駅の使い方(3/4 ページ)

» 2020年08月27日 12時06分 公開
[小林拓矢ITmedia]

駅ナカシェアオフィス事業をJR東日本が開始

 JR東日本は、駅ナカシェアオフィス事業「STATION BOOTH」を19年8月に開始した(関連記事)。駅の中にブース型のシェアオフィスを設け、15分単位での利用が可能となっている。中には机やいすだけではなく、照明、Wi-Fi、電源、USBコンセントといったものが備わっている。ノートPCに接続できるモニターも設置されている。当然のことながら、空調も備わっている。まずは東京駅、新宿駅、池袋駅、立川駅でこの事業を開始し、多くの駅に広げていくという。

2019年8月にオープンした「STATION BOOTH」(出典:JR東日本)

 筆者は、その前に行われた品川駅での実証実験を取材したことがある。中に座ってみると、漫画喫茶の個室のように狭いものの、机やいすなどは十分なものが備わっていて、「仕事はできる」と感じた。ただPCを持ってこないと意味のないスペースであり、休憩目的であれば、カフェのほうがいい。

 そして個室のスペースである。15分単位で利用できることからも分かるように、仕事に集中できるようにはなっているものの、長居をするにはちょっと窮屈だ。しかし、このジャストフィット感がJR東日本の戦略なのだろう。ジャストフィット感を出すことで人の入れ替えを促進させ、回転率を向上させる。

 JR東日本は、働き方改革のサポートなどを目的としているものの、それだけではない。多くの人が外回りでPCやタブレットを持ち歩くようになっているので、適切なワークスペースを供給し、鉄道の利用にもつなげていくことを目指した。つまり、駅が便利な場所として存在感を増していく。そんな企業戦略がうかがえるのだ。

 もっと言えば、街中のカフェなどに利用者を奪われず、自らの事業エリアに囲い込むことで、より利益を上げていく考えが見える。しかも、利用客の回転を頻繁にすることで、さらにその傾向を強くすることが可能だ。

「STATION BOOTH」の設置数を増やしていく構え(出典:JR東日本)

 飲み物などは用意されていない。しかし、駅の売店や自動販売機で買ったものを持ち込めばいい。しかもその運営会社も、JR東日本の子会社だ。

 ジャストフィット感が利用者の集中力をアップさせ仕事がはかどり、それゆえに多くの人が入れ代わり立ち代わり利用するようになり、この事業と鉄道事業、及び関連事業が相互にリンクしていくようになる。設置スペースはカフェほど広くなくてもよく、単にブースを設置すればいいだけだ。余裕のある場所に設置するだけでいい。

 こういった状況を見てか、ほかの鉄道会社もブース型のシェアオフィスを導入するようになった。

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