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新型コロナで絶たれた「世界一への階段」  WAGYUMAFIA浜田代表が見いだしたECとライブコマースの可能性戻らないインバウンド(4/5 ページ)

» 2020年09月11日 15時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

飲食業は『店舗数×α』の時代は終わった

 コロナ禍でもWAGYUMAFIAがECやライブコマースなどで成果を出せた背景には、会員制のビジネスを基本にしていた点がある。ECでは新たな顧客を獲得すると同時に、国内外の常連客が、苦しい状況を支援しようと買い支えてくれたことが大きかった。

 「海外の人は来店できないし、食品も送ることはできませんでした。それでも常連客から応援のメールがたくさん来ました。海外客には『12月頃には行けるだろうから、まず5000ドルを送りたい。受け取ってくれ』と言ってくれる人もいましたね。その気持ちはすごくありがたいです」

 会員制が功を奏して、店舗の枠を超えてブランドビジネスを展開できたことは、今後の展開を考える上で重要なヒントになったという。

 「新型コロナの影響によって、飲食業は『店舗数×α』という時代は終わったと思います。僕らもある程度の店舗数に広げていきたいとずっと思っていましたが、コロナの影響下では200人や300人など、大きなサイズで展開していた店は軒並み大変なことになっていますよね。

 ということは、東京ならこれくらい、海外のこの都市ならこれくらい、といった適正な規模と、ECなどを組み合わせた『マルチウインドウ』で商売をする必要があると考えています。本来の飲食ビジネス――ただおいしいものを作ってお客さんを待っているだけのビジネスモデルは明らかに終わりました。そのために、お客さんを可視化することはとても重要ですよね。会員制でやってきてよかったとあらためて思っています」

 浜田はここ10年ほど、1年の多くを海外で過ごしてきた。だが、新型コロナによって国をまたいだ移動ができなくなり、今回初めて数カ月間連続で日本に滞在している。この間に見た東京の状況に、複雑な思いを抱いた。

 「残念だなと思ったのは、老舗がどんどん店を閉めていることです。特に、夫婦で切り盛りしているような小さな店は大変ですよね。いままで頑張ってきた店や、『オリンピックまで頑張ろう』と思っていた人たちにとって、コロナによる影響は経営をやめる理由になってしまいました。数字に出ている以上に、店がなくなっているのではないでしょうか。

 他の産業と同じで、1店舗かもしれないけれども、なくなってしまったらもう元には戻らない。老舗がなくなるのは悲しいです。そういう人たちに、もう少し社会が支援する体制を作るべきだと感じています」

phot 尾崎牛を手掛ける生産者の尾崎宗春(中央)と、「神戸牛ナンバー1生産者」との呼び声も高い田中久工(右)。浜田は、異なる地域の生産者同士を積極的に交流させるきっかけを作った

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