とはいえ、6月に入ってからはまた事情が違ってきた。営業の自粛が解除されると、弁当やECは以前のようには売れなくなる。毎月戦略を変えなければならなかった。同時に店舗を、通常の営業に戻す方法を模索し始めた。WAGYUMAFIAブランドの店舗は、3店舗を開けることにしたものの、インバウンドが戻る見通しは立っていない。
「外国人客はゼロに近い状況です。戻ってくるのは、10月、11月頃からぽちぽち、という感じではないでしょうか。それまではほぼ全滅だと思っています」
それでも、少しずつ攻めることも考え始めた。新業態のスタンディング焼肉バーとして、新宿・歌舞伎町に昨年オープンしたYAKINIKUMAFIAの最大規模となる店舗を5月下旬、香港にオープンした。一緒にYAKINIKUMAFIAを展開する経営者を募って、全てのノウハウを公開しながら和牛ブランドを盛り上げていく「焼肉社長」の取り組みも本格的に始めた。この時期にあえてYAKINIKUMAFIAの展開を進めるのは、生産者と直に取引する利点を生かせると考えたからだ。
「僕たちが作っているのは、和牛の生産者や契約農家が育てたものを、市場に通さずに仕入れて直販する仕組みです。3月は急に落ち込んだものの、5月には国内の売り上げを戻すことができました。それは生産者のためにもなるはずです。YAKINIKUMAFIAや焼肉社長を広げることによって、より安定的な流通網が作れると考えています」
WAGYUMAFIAはコロナ前、海外展開とインバウンド客に事業の比重を置いていた。だがコロナによって、ビジネスモデルを短期間で転換する必要に迫られた。その場面で浜田は、発想を切り替えることができたといえる。
「かっこいいことを言っていても、やっぱり生き延びないと意味がないですよね。生産者もいますし、スタッフもいますから。今回のコロナの影響で、だめになってしまった人と、『何くそ、頑張るぞ』という人に二分されたような気がします。
もちろん大変な感染症で、多くの人が亡くなり、重傷になった人もたくさんいます。だけど、これで人間としての活動をやめるわけにはいきません。僕らは、豊かに生活を送る方法論をホスピタリィービジネスとして提供していかないといけない。そのために、生産者と共にお互いがいかにして助け合えるのかを考えています」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング