メディア
トップインタビュー
インタビュー
» 2020年09月11日 15時00分 公開

新型コロナで絶たれた「世界一への階段」  WAGYUMAFIA浜田代表が見いだしたECとライブコマースの可能性戻らないインバウンド(2/5 ページ)

[田中圭太郎,ITmedia]

コストを圧縮しながらEC事業を立ち上げ

 浜田はコストを下げるため、絞れるものはとことんまで絞ることを考えた。まず、家賃の交渉。休業した全ての店舗と、新たにオープンしようとしていた店舗の家賃は、ビルのオーナーと交渉して減額に応じてもらった。解約できるものは解約し、助成金など、行政による支援にもアプローチした。

 アルバイトの人数も絞らざるを得なかった。その上で、これまで各店舗にいたスタッフを西麻布の1店舗に集めた。朝からの通し全日営業や、弁当などのテークアウト事業を始めていたものの、それだけでは成り立たない。新たな事業として取り組み始めたのが、EC事業だった。

 国内では和牛のセットを販売。海外には食品を送ることができないため、全世界に同社が扱う日本の調理器具、Tシャツなどを販売した。新潟・燕三条にあるホンマ科学の包丁「グレステン」のWAGYUMAFIA特注バージョン、長い間一緒に展開してきている愛知ドビーによるバーミキュラの鋳物ホーローのフライパンなどに、かなりの注文が入った。

phot 愛知ドビーによるバーミキュラの鋳物ホーローのフライパンと、300日オーバーの骨付き熟成神戸ビーフ

 さらにECを盛り上げるために実行したのが、インターネット上で商品を紹介するライブコマースだった。その取り組みは、インスタグラムなどで世界の顧客にリーチしてきた、WAGYUMAFIAの強みを生かすことでもあった。

 「インスタではWAGYUMAFIAグループ全体で30万人弱のフォロワーがいました。それに、堀江はTwitterのフォロワーが350万人、YouTubeの登録者数が100万人以上です。このつながりが生きて、1回のライブコマースで100万円ほどの売り上げを出すこともありました。ソーシャルメディアが店舗の代わりになるという可能性を感じましたね」

 弁当、EC、ライブコマースの取り組みがけん引して、コストの圧縮とあわせると、4月の国内飲食事業は何とか黒字に持ち込めた。依然として海外輸出は止まっていたため、グループ全体の売り上げダウンは続いていた。だが、新たな取り組みに手応えを感じたことで、浜田は5月から新たなプロジェクトをスタートさせる。

phot コロナ禍では精肉のオーダーが相次いだ。これは焼肉用にスライスした尾崎牛

生産者から和牛や食材を購入して支援

 新型コロナの影響によって、飲食店に食材を提供する生産者も苦しんでいた。WAGYUMAFIAはもともと最高級の和牛を世界に広める目的で設立した。その生産者たちが苦しんでいる状況が、浜田の耳にも入ってきていた。

 「最高級の和牛を扱っている生産者の売り上げが前年の10%になったとか、廃業の危機に陥っているとか……さまざまな窮状を耳にしました。とはいっても、最高級和牛を買える業者はわずかです。当社もお金が十分にあるわけではありませんでしたが、生産者から和牛を買おうと決めました。生産者と一緒にこの危機を乗り越える方法をチーム全員で考えた結論です」

 生産者と一緒に乗り越えようと、プロジェクトは「WAGYUMAFIA RIDE IT OUT PROJECT」(乗り越えろ)と名付けた。生産者から買った和牛は10頭。1頭あたりの価格は200万円から300万円だ。弁当やECで販売し、集まって食べてもらう試みをするなど、1頭の和牛をさまざまな商品にして販売した。

 同じように、和牛以外でも普段から付き合いがあったウニの生産者や豊洲市場の業者からも、高級ウニを400箱購入。契約している茨城県土浦市の久松農園、青森県のニンニク農家、長野県安曇野市のわさび農園、青森県の大鰐温泉から特注のもやしなど良質な野菜を次々と送ってもらった。ECやライブコマースを駆使して、売り上げを伸ばしていった。

 「このタイミングで実験できることは全部やってみました。ライブコマースと、ECサイトのBASEに作ったショップで、売れるものは全て売りましたね。僕はコロナは終わらないと思っているので、実験してよかったものは優先順位を上げ、残すようにしました。ECは新たな事業部を立ち上げるような文脈になって、次の可能性が見えたと思います」

 その結果、5月の国内飲食事業は、WAGYUMAFIAブランドの店舗を4つから1つに減らしたにもかかわらず、前年対比で110%を達成した。しかも、全体の60%近くを占めていたインバウンド関連の売り上げがなくなった中での前年超えだ。浜田は「売り上げを前年比でダブルスコアに伸ばしたような達成感だった」と表現した。8月には対前年比で125%を記録するに至る。

phot 400箱購入したウニを使って実施するイベント「EPIC UNI NIGHT」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセスランキング
  • 本日
  • 週間

    Digital Business Days

    - PR -