――代表が提唱している近場旅行を中心とした「マイクロツーリズム」の実践により業績面に好影響は出ているか。
Withコロナの時期は、近距離の旅行である「マイクロツーリズム」を積極的に推進していく。温泉旅館ブランド「界」の「界 遠州」(静岡県浜松市)では、7月の稼働率が昨年を上回るまで回復してきている。ここでは浜松名物のウナギ料理を出しているが、浜松のお客さまにとってウナギは全く珍しくない。だから非日常を体験してもらうために、アボカドを使ったウナギ料理を出すなど、身近な食材でも新しさを感じてもらうために工夫して提供している。
売り上げは4〜5割減ったとしても「マイクロツーリズム」市場が活性化することで、最悪の状態になるのを防ぐことができる。全国でもしっかりと取り組んでほしい。
中小のホテル旅館は「3密」回避策がとりやすい。団体旅行と宴会に依存している大規模ホテルよりも有利に働く可能性がある。料理とサービス内容を少し工夫すれば、20〜30室の個人向けホテルの方がコロナへの対応を取りやすい。雇用調整助成金を活用すれば採算分岐点を下げることができるし「マイクロツーリズム」の需要をうまく取り込めばかなりの部分まで回復できる。
――テレワークでホテルを利用する人が増える可能性もある。
テレワークはコロナが終わっても定着するかもしれない。企業もテレワークを出勤として認めるようになってきた。例えば木曜日に祝日があるようなときにも、金曜日をテレワークにすれば3泊4日の家族旅行に出ることも可能だ。両親は金曜日だけ働いて、子どもたちはホテルのアクティビティーに参加するといったように。テレワークの浸透によって観光需要が広がる効果も考えられる。特に閑散期の需要拡大につながるので、積極的に取り組んでいきたい。
――日本の旅行業界はコロナ禍が長期化する中、果たして生き残れるか。
日本の観光市場には22兆円という非常に大きな国内市場があり、これこそが最大の強みだ。この22兆円に加えて海外旅行市場は3兆円程度と想定され、海外で消費していた金額も含めれば25兆円の市場がある。国内市場の需要を伸ばしていけばインバウンドがなくても必ず生き延びられる。
大事なのは、コロナが終わった後の回復のスピードだ。これを速めるためには人材を維持しておくことが欠かせない。人材を育てるのには10〜15年は掛かる。だから今は苦しくても何とかして人材を維持して、復活に備えてほしい。地方にも人材が育ってきている。旅行業が復活すれば地方の活性化にもつながる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング