自動車メーカーもそういう構造に徐々に気づき始めて、トップダウンで「下取りを取り漏らすな」という命令は10年ほど前から出ているらしい。というのは買い取り業者から聞いた話で、昔はディーラーに来た客が下取りに満足しないと、大っぴらに彼らが紹介されたが、すでにその当時、営業が会社に内緒でこっそり紹介してくる状況だったという。まあ新車セールスにとって、下取りは、新車購入の原資作りのための一手段に過ぎないのは構造的に変わらないのだ。
自動車メーカーにとっては、それは取りっぱぐれているビジネスである。新車にナンバーが付き、クルマとしての使命を終えてリサイクルされるまで、平均で13.26年(一般財団法人自動車検査登録情報協会調べ)となっている。
最初の車検が3年目、2度目の車検が5年目、それからおよそ4回車検を取って廃車になるということになる。そしてその間には多分2回ほど売買されるのではないか? と考えると、1台のクルマは3人のオーナーの間を渡ることになり、その度にビジネスチャンスがやってくるわけだ。
従来、メーカー系の自動車ディーラーは、中古車の売買に関与するのはせいぜい最初の1回だけ、それは3年目か5年目の車検のタイミングだ。5年目の車検時には、コンディションや走行距離によって、自社で扱わずに、オークションに出すケースも多かったのではないかと思う。
そうやってディーラーから放出されたクルマは街場の中古車屋扱いとなって、再流通してきた。しかしこれらの再流通をメーカーがビジネスにしない手はない。つまり、トヨタはクルマを作ってから廃車までの全ライフについてビジネスの範囲を広げようとしている。
ディーラーにとって中古車はメインのビジネスではなかった(イメージ)
- 自動車を売るビジネスの本質 マツダの戦略
原理原則に戻ると自動車ビジネスもシンプルだ。商品とサービスに魅力があれば、新車を正価、つまり値引きせずに売れるから中古車の相場が上がり、その結果下取り価格が高いので、買い替え時により高いクルマが売れる。これが理想的サイクルだ。それを実現した例として、マツダの取り組みを歴史をひもといてみよう。
- 強いトヨタと厳しい日産
日本の自動車メーカーは調子が良いのか悪いのか、とくにここ数年中国の景気悪化が伝えられており、その影響が心配される。全体を見て、とにかくこの逆境下で強さに圧倒されるのがトヨタで、ちょっと言葉を失う厳しさに直面しているのが日産だ。スズキとマツダは日産を見るとまだ救われるが、下を見て安心していていい状況とは思えない。概要としては各社そろって、程度の差はあれど逆境である。
- トヨタが始めるブロックチェーンって何だ?
トヨタ自動車は、ブロックチェーン技術の活用検討の取り組みを発表した。同社は、4月からグループを横断する「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」を立ち上げ、あらゆるモノ、サービスを、「安全・安心」かつ「オープン」につなぐ新しいサービスに取り組んでいくという。
- トヨタとNTTの提携 途方もない挑戦の始まり
トヨタ自動車とNTTが提携を発表した。豊田社長は、2018年のCESで「トヨタはモビリティカンパニーへと変わる」と宣言した。それを今トヨタは別の言葉で再定義しようとしている。「クルマは社会システムの一部になる」だ。そう見ると、情報インフラ企業としてのNTTと、人の移動インフラ企業としてのトヨタが協業することは、ある意味当たり前だろう。
- トヨタの役員体制変更の狙いは何か?
4月1日、トヨタは役員体制を大幅に変更し、階級の階層を減らしてシンプル化した。具体的には従来の「副社長」を廃止して「執行役員」に一本化した。一見狙いが分かりにくい人事制度改革だが、実は骨太な方針に沿ったものだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.