クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

コロナ対策? トヨタが非対面中古車ビジネス池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2020年09月14日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

自動車メーカーの思惑

 自動車メーカーもそういう構造に徐々に気づき始めて、トップダウンで「下取りを取り漏らすな」という命令は10年ほど前から出ているらしい。というのは買い取り業者から聞いた話で、昔はディーラーに来た客が下取りに満足しないと、大っぴらに彼らが紹介されたが、すでにその当時、営業が会社に内緒でこっそり紹介してくる状況だったという。まあ新車セールスにとって、下取りは、新車購入の原資作りのための一手段に過ぎないのは構造的に変わらないのだ。

 自動車メーカーにとっては、それは取りっぱぐれているビジネスである。新車にナンバーが付き、クルマとしての使命を終えてリサイクルされるまで、平均で13.26年(一般財団法人自動車検査登録情報協会調べ)となっている。

 最初の車検が3年目、2度目の車検が5年目、それからおよそ4回車検を取って廃車になるということになる。そしてその間には多分2回ほど売買されるのではないか? と考えると、1台のクルマは3人のオーナーの間を渡ることになり、その度にビジネスチャンスがやってくるわけだ。

 従来、メーカー系の自動車ディーラーは、中古車の売買に関与するのはせいぜい最初の1回だけ、それは3年目か5年目の車検のタイミングだ。5年目の車検時には、コンディションや走行距離によって、自社で扱わずに、オークションに出すケースも多かったのではないかと思う。

 そうやってディーラーから放出されたクルマは街場の中古車屋扱いとなって、再流通してきた。しかしこれらの再流通をメーカーがビジネスにしない手はない。つまり、トヨタはクルマを作ってから廃車までの全ライフについてビジネスの範囲を広げようとしている。

ディーラーにとって中古車はメインのビジネスではなかった(イメージ)

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