人事を「採用業務」から解放する? 一石二鳥のリファラル採用、成功のカギ「コネ採用」との違いは?(3/3 ページ)

» 2020年09月17日 05時00分 公開
[鈴木 貴史ITmedia]
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 コネ採用は社長や経営幹部による裏口入社的なもの。一方、リファラル採用は戦略的に社員の人脈を活用して透明性をもって採用する手法です。当社では、リファラル採用をいくつかの段階に分け、「リファラル採用1.0」を従来のコネ採用、「リファラル採用2.0」をインセンティブ制度だけ作って社員に紹介してもらう採用、「リファラル採用3.0」を社員のエンゲージメントを高めながら自発的に紹介したい仕組みづくりから始まる採用だと定義しています。

リファラル採用の定義

インセンティブだけでは不十分

 ご紹介したように、リファラル採用は採用効率の高い手法ですが、現場を巻き込むことから人事と社員双方に負担がかかります。先ほど「紙とハンコ」に関しても紹介しましたが、いざリファラル採用をしようとしても「友人に職場の紹介をして、決定すると店長にハンコを押してもらって申請し、さらにエリアマネジャーがハンコを押してFAXして……」という相当に手間のかかる手続きをしているケースもあります。現場や人事の負担が大きければ、入社した人へのフォローも不十分になってしまい、人材の定着率もなかなか上がりません。

 また、リファラル採用としてよくある、紹介したら一時金などを支給するインセンティブの制度だけを作ったものでは、「リファラル採用2.0」の状態にとどまり、制度が形骸化し、失敗するケースもよく目にします。これでは、せっかくのリファラル採用のメリットを生かせず、社員と人事の負担だけが大きくなり、結果としてエンゲージメントが下がってしまう可能性もあります。

リファラル採用の煩雑な手続きの例

 そのため、リファラル採用の場でもテクノロジーを活用して業務効率化を図り、本質的に社員のエンゲージメントを高めながら取り組む必要があります。昨今では多くのリファラル採用サービスが登場していますが、導入することで社員が紹介する手間や社内のフローが簡単になるだけではなく、採用活動を通じて人事と社員の距離が近くなるコミュニケーションを取ることもできるでしょう。

 例えば、会社の方向性や採用情報を社内ニュースとして配信することで、社員が当事者意識をもって紹介することを促せます。また、社員の興味度合いや紹介数からひとりひとりのエンゲージメントが分かるので、ファン社員のおすすめの声を伝播(でんぱ)させるとともに、個別に適したコミュニケーションを取って建設的におすすめしたい組織を創っていくことができます。

 このように、社員をファンにするリファラル採用をテクノロジーで仕組み化して促進することで、現場にマッチした人材へ戦略的にアプローチして採用業務を効率化しながら、社員全員で仲間集めをすることで社員のエンゲージメント向上へつながります。そうすることで、本当の意味で人事を「採用業務」から解放することができるのです。

採用起点にさまざまな問題の解決にも

 今回は、採用とエンゲージメントをつなげるリファラル採用についてご紹介しました。社員ひとりひとりが当事者意識をもって自社を友人に紹介する会社を創っていくことがニューノーマル時代の人事に求められる役割であり、このような新時代に適した採用・組織改革の背中を押す意思決定をすることこそが経営者に求められる役割ではないでしょうか。

 経営目線で一気にテクノロジー化が進む今こそ、社員のエンゲージメントを高めながら戦略的にリファラル採用に取り組んでみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール・鈴木 貴史(すずき・たかふみ)

株式会社MyRefer

代表取締役社長CEO

2012年インテリジェンス(現:パーソルキャリア)入社。

IT領域の採用コンサルティングに従事の後、2015年、1億円の社内資金調達のもとHRTechベンチャーMyReferを創業。グループ歴代最年少にてコーポレートベンチャーCEOに就任。

2018年、更なる事業拡大を目指し、U-NEXT宇野氏などの支援を受け総額3.6億円の第三者割当増資を実施しMBOスピンアウト。株式会社MyReferの代表取締役社長 CEOに就任。

また、2018年より国会『働き方改革連盟』発起人としても活動。


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