観光列車は“ミッドレンジ価格帯”の時代に? 新登場「WEST EXPRESS 銀河」「36ぷらす3」の戦略杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)

» 2020年09月18日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 客室設備は種類が豊富で、6両編成の車両ごとに異なる配置である。普通車指定席は座席間隔を広げ、リクライニング角度も深くした。ベッドタイプの「クシェット」は、ブルートレイン時代の2段式B寝台に似ている。こちらはサンライズ出雲/瀬戸の「ノビノビ座席」に相当し、普通車指定席として販売される。

「WEST EXPRESS 銀河」の客室。B寝台の雰囲気を残す「クシェット」。寝台料金は不要(出典:JR西日本「JRおでかけネット」

 1号車はグリーン車で2座席分の幅を1人で使うというぜいたくさ。「ファーストシート」という名の向かい合わせボックスシートだ。両側の背もたれを倒すとベッドになる。ダブルベッドとはロマンチックだけど、夜行では1ボックスにつき1人用で販売する。6号車は個室タイプが用意された。1人用が1室、2人用が4室。2人用は昼行では3人まで利用できる。このほか、4号車は全て共用ラウンジとなるほか、1号車、3号車、6号車にフリースペースがあり、眠れない人々に談話室を提供する。

「WEST EXPRESS 銀河」のグリーン座席「ファーストシート」。夜行列車ではこの区画を1人で使う。両側の背もたれを中央に倒すとベッドになる(出典:JR西日本「JRおでかけネット」
「WEST EXPRESS 銀河」の4号車は全室がラウンジ(出典:JR西日本「JRおでかけネット」

 画期的な座席の半面、定員数が少なくて営業的には心配でもある。もちろん新造車両ではなく、国鉄時代に京阪神の快速列車用として製造された「117系電車」をリフォームしている。室内は新品、躯体は1980年製の中古物件だ。製造から40年もたった電車だけど、JR西日本は資金難という事情もあって大切に整備している。

 117系電車は素性もいい。国鉄が関西の並行私鉄に対抗するため設定した「新快速」専用に作った高性能車両だ。乗り心地をよくするため、当時は特急車両だけで採用された空気ばね(エアサスペンション)を搭載した。夜行列車としての乗り心地も悪くないはず。

 「WEST EXPRESS 銀河」のコンセプトは「手軽に利用できる観光列車」だ。JR西日本は最高級のクルーズトレイン「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」を成功させた。価格は1人あたり32万5000円〜132万5000円で、人気を維持している。この成功体験をもとに、中古電車を改造してコストを下げ、低価格帯の長距離観光列車を企画した。低価格といっても、現在のボリュームゾーンの観光列車としては高めだ。

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