いずれにせよ、ワタミは08年以降、精力的に職場環境の改善に努め、ホワイト企業にも認定されていました。
コロナ禍でも、いち早く休業を強いられていた同社の社員が「稼げるように」と、人材派遣会社「ワタミエージェント」を設立。休業店舗の正社員約780人とアルバイト約1万人が希望すれば、人出不足の小売店や農家などに派遣し、契約に応じて給与を払うとしていました。
正社員は派遣社員になった後も雇用契約を維持し、休業手当の支給も約束するなど、「ワタミがんばってる!」感ありありの戦略に出ていたのです。
それなのに「不法労働」とはわけが分かりません。派遣会社を作り他社に派遣するくらいなら、自分のグループ会社をサポートすればよかっただろうに……。階層の“上”からは、“下”の景色が見えてなかったということなのでしょう。
私はこれまでたくさんの会社を取材させていただきましたが、問題を抱える会社は例外なく上と下が断絶していました。しかも、トップはそのことに1ミリも気付いていませんでした。
そういった会社では大抵の場合、社員は「ナマ社長」を見たことがないのです。トップが“下”におりて、社員たちと接し、情報を取りに行くことをしないので、「幽霊社長」に成り下がります。
一方、社員が生き生きと働いている会社のトップは、誰一人として社長室にこもることがなかった。毎朝、社内を1時間かけて歩きまわったり、社食で従業員たちと食事をしたり、それぞれのやり方で、それぞれの考えで、社員と“人”としてつながる場や機会を意識的につくり、MBWA(Management By Walking Around)を実践していました。
「いやいや、うちはちゃんと週報というのがあって、問題があれば社員から上がるシステムを作っています」と胸を張るトップがいますが、下は都合の悪いことは報告しません。情報は自分から取りに行く。これが「元気な会社」の基本なのです。
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