クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

MX-30にだまされるな池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)

» 2020年10月19日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

動的な検証でも好印象

 走り出して感じるのは、パワートレインの出来の良さだ。筆者が毎度うるさくいう、転がり出しのリニアリティは秀逸。日常速度域からの追従も花丸を付けられる。全開加速の評価について、筆者は合格ラインがゆるいので、減点ゼロ。ただし、エンジンにパンチを求める向きだとマッチモアを求めるのかもしれない。

 ただし一度頭から消し去っていた電動化の一番槍モデルという役務を考えると、90分の試乗でオンボード燃費が14キロそこそこというのは、少々ひっかかる。マイルドハイブリッドというメカニズム要件を考え、かつあの素直で好もしいフィールに免じたくはある。しかし、電動化全体のけん引役の一番槍ということは、すなわちマツダの中期的エコ戦略の第一印象を形作ることを意味するわけだ。自社のディーゼルだって20キロくらい走る中で、それが14キロで本当に良いとマツダは考えるのだろうか?

 いろいろと事情があるのは分かるが、本当はカードを切る順番は、BEV、レンジエクステンダー、マイルドハイブリッドであるはずだ。シリーズ中での役割から見ればマイルドハイブリッドが14キロなのはいけないわけではないのだが、シリーズのイメージを決める第一弾をそこからスタートするヤツがいるかと思うのは本音である。

フローティングデザインを採用したセンターコンソール。下部のトレーはコルク材。東洋工業(現マツダ )創業時はコルクメーカーであったことに由来する

 ハンドリングも秀逸だ。斜め前方にロールして、進入でターンインさせる時の素直さは、まさに適性値。敏感でも鈍感でもないど真ん中にあり、素直さが光る。そこからロールが後ろへ抜けていく過程で前後並行ロールに入ったところ、つまり旋回領域でのフィールは、このクルマのハンドリングで最大の美点である。変ないい方だが、もしフロントタイヤが握力で路面をグリップしているのだとすれば、とんでもなく強い握力で路面を握りしめている感覚だ。取材時はそこそこ雨の降るウェット路面だったが、フロントは盤石でビクともしない。完全にフロントのグリップを信用していける。

 ここで説明しているのは常識的な速度範囲でのフロントタイヤのフィールとインフォメーションであって、絶対的なコーナーの通過タイムをどうこういう方面の話ではない。公道での試乗なのでそんな運転はしていない。とにかく普通に走る速度域で、常に絶大な頼りがいが感じられるのだ。

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