ドライバーに与えられる空間は、最近のクルマ、ことに第7世代マツダ車の中では白眉だ。「魂動デザインのスタイリッシュさでマツダのブランドイメージを差別化する」。そういう戦略の中で、これまでのマツダ車はリソースの振り分けをデザイン側に大きく配分してきた。
その結果、最も犠牲になってきたのは車内空間の部分だ。Mazda3のデビュー時にも、Aピラーとドライバーの目の位置との関係に圧迫感があり、空間デザインの中でベストな頭の位置と、物理的なシート合わせのベストの位置にリクライニング角でワンノッチ分のズレを感じたし、それは記事にも書いた(「マツダの新型アクセラ、失敗できない世界戦略」参照)。
CX-30では、Mazda3ほどしわ寄せを感じなかったが、MX-30のデザインで、真に健康な空間設計の手応えを感じた。デザインと空間のリソースの奪い合いにおいて、マツダのCセグメントの基礎となるMazda3が最もデザイン寄りで、次いでCX-30、空間側に最も寄せたのがスペシャリティ寄りのMX-30というイメージの逆転が起きている。
テキスタイルの印象がさらりとしていて感触の良いシート。内装にはペットボトルのリサイクル材や、ワイン栓の端材であるコルクなど、環境負荷の低い素材を多く使う
ついでにいえば後席の頭上空間もこのクラスとしては相当に余裕がある。握り拳ひとつが悠々と入るし、リヤシートそのものの出来もとても良い。ボルスターと呼ばれるヘリの出っ張りで体を押さえてるわけでもないのに、旋回時の横Gをしっかり支えるサポート感があるし、それ以前に座面による体重の受け止めがしっかりできている。後席の問題を挙げるとすれば、構造的に小さくせざるを得なかったサイドウインドーによる閉塞感。加えて窓が一切開かないことだ。
このリヤサイドの窓の影響は運転時の斜め後方視界でもハンデとなる。合流の斜め後方視界については相当に苦しい。長期的にはブラインドスポットモニターの類で解決が図られていくのだと思うが、現時点では直接の目視ができないことはやはり少しハンデとなるだろう。
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東京モーターショーの見どころの1つは、マツダ初のEVであるMX-30だ。クルマの生産から廃棄までの全過程を通して見たときのCO2負荷を精査した結果、35.5kWhというどこよりも小さいバッテリーを搭載した。世の中の流れに逆らって、とことん真面目なEVを追求した結果出来上がったのがMX-30だ。
- マツダのEVは何が新しいのか?(後編)
「MX-30は魂動デザインなのか?」。答えはYesだが、第7世代の陰影デザインは、MX-30には緊張感がありすぎる。そこでさらに「陰影」自体も取り去った。そこに残ったのは優しくて健全なある種の健康優良児のような姿だった。
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マツダが打ち出したEVの考え方は、コンポーネンツを組み替えることによって、ひとつのシステムから、EV、PHV(プラグインハイブリッド)、レンジエクステンダーEV、シリーズ型ハイブリッドなどに発展できるものだ。そして試乗したプロトタイプは、「EVである」ことを特徴とするのではなく、マツダらしさを盛ったスーパーハンドリングEVだった。
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マツダの戦略が分岐点にさしかかっている。第2四半期決算の厳しい数字。第7世代の話題の中心でもあるラージプラットフォームの延期。今マツダに何が起きていて、それをマツダがどう捉え、どう対応していくつもりなのか? その全てを知る藤原清志副社長がマツダの今を語る。そのインタビューを可能な限りノーカット、かつ連続でお届けしよう。
- マツダの新型アクセラ、失敗できない世界戦略
新型Mazda3(アクセラ)はいわゆるCセグメント。フォルクスワーゲン・ゴルフをベンチマークとする小型車で、トヨタ・プリウス、カローラなど世界最激戦区で戦うモデルだ。マツダにとって失敗が許されないモデルであり、成功すればマツダのイメージを大躍進させる重要な位置付だ。
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