MX-30にだまされるな池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2020年10月19日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

頭を一度空にして乗ってみるべき

 しかし、このクルマのキャラクターをつかもうと思うのであれば、ここまで書かれてきたことを全部一度忘れて欲しいのだ。変化球モデルだと思わない。スポーツ系モデルだと思わない。ついでにフリースタイルドアのことも電動化のことも全部忘れる。そうやって全部の先入観を排除して、普通のCセグのSUVだと思って乗ってみてほしい。その素直で真面目な出来にびっくりするだろう。

 少し具体的に書いていこう。このクルマのキャラクターが最も端的に現れているのは、外観のスタイルだ。マツダがこれまで送り出してきた第7世代の、緊張感がある濃厚なスタイリッシュさと対照的に、肩の力をすっと抜いたような、さらりとしたデザイン。イケメンは白いTシャツとジーンズでもかっこいい的な、自己主張をほっぽり出したかのようなアプローチが見て取れる。

ウエストラインで上下に綺麗に分割されたシェープは建築的。構造的には前後ホイールという橋梁の上に、フェンダーラインを前後に梁のように渡し、その上に見た目の軽量感のあるキャビンを乗せた構造

 実のところTシャツもジーンズも細かく吟味されているのだけれど、一見した感じは実にフランクで、無造作で、気取らないものに見える。しかし、詳細に見ていくと、緻密に計算しつくして人為的なものがまるで存在しない空間を、考え抜いて作り上げる日本庭園のような不作為の演出が見えてくる。これについてはいつか機会があればまた書きたい。

 着座したポジションについては、シートの出来も含めて、全市販車中でベストの一台。もっともマツダはこれについて耳にタコができるくらい散々理屈をこねてきて、ハードルが上がっているので、ここでコケたら集中砲火を浴びてしまう。

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