しかし、このクルマのキャラクターをつかもうと思うのであれば、ここまで書かれてきたことを全部一度忘れて欲しいのだ。変化球モデルだと思わない。スポーツ系モデルだと思わない。ついでにフリースタイルドアのことも電動化のことも全部忘れる。そうやって全部の先入観を排除して、普通のCセグのSUVだと思って乗ってみてほしい。その素直で真面目な出来にびっくりするだろう。
少し具体的に書いていこう。このクルマのキャラクターが最も端的に現れているのは、外観のスタイルだ。マツダがこれまで送り出してきた第7世代の、緊張感がある濃厚なスタイリッシュさと対照的に、肩の力をすっと抜いたような、さらりとしたデザイン。イケメンは白いTシャツとジーンズでもかっこいい的な、自己主張をほっぽり出したかのようなアプローチが見て取れる。
ウエストラインで上下に綺麗に分割されたシェープは建築的。構造的には前後ホイールという橋梁の上に、フェンダーラインを前後に梁のように渡し、その上に見た目の軽量感のあるキャビンを乗せた構造
実のところTシャツもジーンズも細かく吟味されているのだけれど、一見した感じは実にフランクで、無造作で、気取らないものに見える。しかし、詳細に見ていくと、緻密に計算しつくして人為的なものがまるで存在しない空間を、考え抜いて作り上げる日本庭園のような不作為の演出が見えてくる。これについてはいつか機会があればまた書きたい。
着座したポジションについては、シートの出来も含めて、全市販車中でベストの一台。もっともマツダはこれについて耳にタコができるくらい散々理屈をこねてきて、ハードルが上がっているので、ここでコケたら集中砲火を浴びてしまう。
- マツダのEVは何が新しいのか?(前編)
東京モーターショーの見どころの1つは、マツダ初のEVであるMX-30だ。クルマの生産から廃棄までの全過程を通して見たときのCO2負荷を精査した結果、35.5kWhというどこよりも小さいバッテリーを搭載した。世の中の流れに逆らって、とことん真面目なEVを追求した結果出来上がったのがMX-30だ。
- マツダのEVは何が新しいのか?(後編)
「MX-30は魂動デザインなのか?」。答えはYesだが、第7世代の陰影デザインは、MX-30には緊張感がありすぎる。そこでさらに「陰影」自体も取り去った。そこに残ったのは優しくて健全なある種の健康優良児のような姿だった。
- EVにマツダが後発で打って出る勝算
マツダが打ち出したEVの考え方は、コンポーネンツを組み替えることによって、ひとつのシステムから、EV、PHV(プラグインハイブリッド)、レンジエクステンダーEV、シリーズ型ハイブリッドなどに発展できるものだ。そして試乗したプロトタイプは、「EVである」ことを特徴とするのではなく、マツダらしさを盛ったスーパーハンドリングEVだった。
- ラージの遅れは「7世代の技術を現行世代に入れる。もうそれをするしかない」 藤原副社長インタビュー(3)
マツダの戦略が分岐点にさしかかっている。第2四半期決算の厳しい数字。第7世代の話題の中心でもあるラージプラットフォームの延期。今マツダに何が起きていて、それをマツダがどう捉え、どう対応していくつもりなのか? その全てを知る藤原清志副社長がマツダの今を語る。そのインタビューを可能な限りノーカット、かつ連続でお届けしよう。
- マツダの新型アクセラ、失敗できない世界戦略
新型Mazda3(アクセラ)はいわゆるCセグメント。フォルクスワーゲン・ゴルフをベンチマークとする小型車で、トヨタ・プリウス、カローラなど世界最激戦区で戦うモデルだ。マツダにとって失敗が許されないモデルであり、成功すればマツダのイメージを大躍進させる重要な位置付だ。
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