クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

MX-30にだまされるな池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)

» 2020年10月19日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

ブレーキフィールが変わった

 乗り心地方面の話をすると、トーションビームだからという人が出てくるだろうが、サスペンションの領域は良質。細かいことをいえば、荒れた路面でザラゴロしたタイヤの踏面の硬さを少し感じる。もう少し減衰の良いタイヤだったらまだ向上する余地はあると思う。

 もう一点、これは大きな違いだが、ブレーキのフィールが変わった。Mazda3とCX-30では、マツダは意を決して、踏力制御型のブレーキを採用した。普通はペダルストロークでブレーキの効きを制御するのだが、ブレーキパッドが当たったところでストロークを止めて、そこからは踏み込みの力加減で制御するようにした。例えるならレンガを踏んだような踏み心地で、それは従来のストローク型制御に対して、踏力型制御派が理想と掲げてきたインターフェイスだ。

シンプルモダンでギラギラ感のないインテリア。どこかムスクの匂いが漂う感じの第7世代のこれまでと方向性がガラリと変わった

 筆者もこの一派であった。過去形で書くのはMX-30のブレーキに新しい解を見たからだ。MX-30でも基本が踏力制御型であることには変わりはない。しかしパッドが当たったところから一切ストロークさせないレンガのようなものではなく、テニスボールを踏んでいるように強い反力を感じながら、力の込め具合を足裏で感じられるものになっている。

 レンガタッチは、今までのインターフェースに慣れている人には違和感があり、「効かないブレーキ」だと思われることは容易に想像できる。ペダルが動かなくなったらそこが踏み込み量の終着点だと思うだろうから、まさかそこから圧を上げていくものだと思わないのだろう。

 今回のテニスボールタッチは、踏力型とストローク型のうまい折衷点で、実際に極めて操作しやすかった。これは大きな美点である。

 ということで走りと快適性という、乗用車の最も大事なところで極めてバランスが良く、感心しきり。これはマツダの最量販車種になるべきではないかと思ったくらいである。

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