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アナログ回帰のコピック 製造会社社長が描くグローバル戦略と「アワード開催の真の狙い」アートの力で課題解決を(3/4 ページ)

» 2020年10月22日 05時00分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

コロナ時代のアートの力とは

――特に今はコロナ禍の世界が大変な事態になっていますが、アートの力はどのような力を持っていると考えていますか。

 例えばミャンマーは、アジアで唯一、最後に残された軍事国家といわれます。そんな国ですが、アニメとかのサブカルチャーといったソフトの力をまず一気に国に入れて、それで軍事国家の状況を変えていこうと試みていた時期があります。

 他には、いま中国と米国はいつ戦争するの分からない――。そういわれるほど緊張関係が続いていますが、そこで交渉してお互い妥協点を見つけるというような政治的な話し合いだけでは、私は限界があると考えています。そういう政治とは別のところで、コピックアワードのように、中国や米国をはじめ、100カ国近い世界の国々がこうして集まって仲良くやっていることをアピールできるのではないかと考えています。草の根的な活動になりますけど、こういうのがとても大事だと思っています。

phot 審査風景

――アート的な考え方がビジネスなどの場面で役に立つこともあるのですか。

 実は当社のグループでは、ニュージーランドのクィーンズタウンの郊外で、「ミルブルックリゾート」というリゾート事業も手掛けています。そこでは毎年3月に、「ニュージーランド・オープン」というゴルフの大会が開かれます。私も現地に顔を出すんですが、そこにはニュージーランドの首相をはじめ、政治家の方々も出席されます。

 そこである政治家の方が、「僕はアートスクールを卒業していて、それで政治家になった」と話をしていたんです。それで僕が、「美術系の大学を出て、政治家になって生かされていることはありますか」と聞いたら、「政治が抱える複雑な問題には、ロジカルシンキングだけでは限界があって、『アートシンキング』と呼ばれる帰納的な考え方、理屈じゃないところから共通点を探るアプローチも役に立つ」と話していたんです。アートの力で世界を変えていくっていうのはそういうこともあるんだなと思いましたね。

phot

――画材だけでなくさまざまなビジネスを展開していますね。

 他にも当社のグループでは、AppleやAdobeの製品を中心としたでデザイン・クリエイティブソリューションの提供、広告における「カラーキャリブレーション」という色調整を支援するサービス、学校教育などに使われているiPad等のモバイル端末を一括管理する「モバイル・デバイス・マネジメント」と呼ばれる事業、そしてPhotoshopやIllustratorをはじめとするソフトウェアの使い方を教えるセミナーや講習なども開いています。

phot 準グランプリを受賞したHiddenService(Germany)「Vielfalt」(コピックアワード2020のWebサイトより)

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