ある鬼には、こんな言葉を投げかけています。
「私はお前に期待しているんだ」
「これからも もっともっと強くなる 残酷になる」
注釈として説明しますが、「残酷になる」というのは、鬼にとって誉め言葉です。しかし後に、これらの言葉は真意ではなく、相手を操るための方便であったことが判明します。そして、本音は以下の言葉となって現れます。
「私はお前達に期待しない」
「貴様らの存在理由がわからなくなってきた」
鬼舞辻の言葉には、愛情のかけらもない冷たさが宿っています。それは言葉を超えて、感情に直接突き刺さります。隠れ無惨化した上司も同様でしょう。心ない言葉の裏には、愛情がありません。愛のない言葉の冷たさは、柔らかい言い回しだったとしても言葉を超えて感情に直接伝わるのです。
「いいか? 俺は神だ! お前らは塵だ!」
「俺が犬になれと言ったら犬になり 猿になれと言ったら猿になれ!!」
こちらも部下をぞんざいに扱っているかのような言葉ですが、発言の主は鬼舞辻ではありません。鬼舞辻を倒そうとする鬼殺隊(きさつたい)の柱(はしら)の1人、宇髄天元(うずいてんげん)です。ちなみに柱とは、鬼殺隊の中で最上位の実力を持つ9人の幹部を指す役職です。
先ほどの言葉は、鬼殺隊のメンバーである物語の主人公、竈門炭治郎(かまどたんじろう)たちに向かって放たれました。言葉だけ見ると鬼舞辻以上の悪者のように感じてしまいますが、宇髄天元こそ言葉下手な上司の典型です。余談ですが、鬼滅の刃に出てくる柱たちは皆優れたリーダーですが、その大半は宇髄と同じく言葉下手です。
一瞬ギョッとする言葉を吐く宇髄ですが、そこに悪意はないことが、この後に続くこんなやりとりから分かります。
炭治郎:「具体的には何を司る神ですか?」
宇髄:「いい質問だ お前は見込みがある」
炭治郎が空気を読めないだけかもしれませんが、そんなKYな質問をきっかけに宇髄との新たなコミュニケーションが生まれています。本当に相手を塵(ごみ)だと思っていたら、こんなやりとりにはならないはずです。もし炭治郎が質問した相手が鬼舞辻であれば、「誰が喋って良いと言った?」と、即座に粛清されてしまうことでしょう。
コミュニケーションを重ねるごとに宇髄というキャラクターの内面が見えてくるようになり、派手な発言の裏に茶目っ気や愛情が感じ取れるようになっていきます。会社でも、上司と部下の間にこうした関係性が形成されていくと、組織内の意思伝達はスムーズに行われるようになっていくでしょう。
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