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生き残りをかけたANA「400人出向」 左遷でなく“将来有望”のチャンス?河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)

» 2020年11月13日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

人はなぜ「成長」できるのか

 少々ややこしい話ですが、以下の「私」の概念図に示した通り、「私」は「私」だけじゃない他者からの外的な影響を受けながらつくられます。家庭環境、職場環境などに存在する有形無形の環境要因が複雑に絡み合いながら「私」はつくられているのです。

「私」の概念図(筆者作成)

 どんなに「俺は一匹狼だぜ」と豪語している人でも、他者との関係性の質が「私」に 強く影響する。そして、「強い自己」を持つ人は、自己と外的な影響の相互作用で「私」がつくられ、年齢に関係なく成長し、進化することが可能です。

 強い自己を持つ人は、自分を取り囲む環境と共存はしますが、環境に依存はしません。強い自己を持つ人は自分が置かれた環境で、自分の社会的役割を全うするために自己を磨き続ける一方で、周りにも影響を及ぼしつつ、「自分の居場所」を確立します。つまり、「環境で変わる」だけでなく、「環境を変える」ことができるたくましさを持っているのです。

 「強い自己」とは、「自分がある」とか「自分がない」という表現で使われる「自分」とほぼ同義で、強い自己には「意志力(Grit)」が必要です。意志力にはさまざまな解釈がありますが、私が指す「意志力」は「自分がどうありたいか?」といった仕事上の、いや、人生上の価値観です。

 強い意志力があれば、必ずや強い自己をつくることができます。そして、強い自己を持つ人は、年齢や属性で人を差別したり区別したりしません。どんな人からでもどんなことからでも、「学んでやるぜ!」という貪欲さと謙虚さを持ち合わせています。自己と他者を分かつのではなく、ときに自分の弱さを認め、ときに他者の力を借り、常に自分に足りないものを補強し成熟します。

 そのプロセスを繰り返す中で、「求められる役割をしっかりと演じさえすれば居場所と存在意義を見つけられる」という穏やかな自信が高まり、どんなに厳しい状況になろうとも乗り越えられるようになっていくのです。

 一方、「自己が弱い」人は外的な影響をもろに受け、環境に依存します。そういった人は大抵、「なんで私がこんなとこにいなきゃいけないのよ」と周りをさげすみ、属性で人を区別します。弱い自己の人は、周りに“虎”がいれば虎への依存度を高め、自分が運よく権力を手に入れれば、権力を盾に周りを見下します。「力」に執着することで不安から逃れる人になり下がります。

 つまり、権力は強さではなく弱さに宿り、そこには「成長」もなければ「進化」もないのです。

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