社員が新型コロナ感染でも慌てない! 労務対応チェックリスト、初動から対外的発表まで(3/5 ページ)

» 2020年11月13日 07時00分 公開
[BUSINESS LAWYERS]

3-5.感染した従業員の職場復帰のタイミング

 新型コロナウイルス感染者の職場復帰のタイミングについては、症状が完全に治まった時点で、本人の体調や社内の感染状況その他を含めて時期を検討します。

 厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」 において、「新型コロナウイルス感染症患者については、医療保健関係者による健康状態の確認を経て、入院・宿泊療養・自宅療養を終えるものであるため、療養終了後に勤務等を再開するに当たって、職場等に、陰性証明を提出する必要はありません」「PCR検査を実施した医療機関や保健所において、各種証明がされるかどうかは、医療機関や保健所によって取扱いが異なりますが、国内での感染者数が増える中で、医療機関や保健所への各種証明の請求についてはお控えいただくよう、お願いします」(※1)とあり、直ちに証明書などの発行がなされない可能性もあります。

 従って、新型コロナウイルス感染者の職場復帰のタイミングは本人の症状が消失したかどうかを確認しながら判断することになりますが、目安としては発症から14日経過、症状の完全な消失から72時間の経過を目安として検討することになるでしょう。念のため自宅待機期間をさらに延長したり、復帰の方法としてまずは在宅勤務の形にしたりするなど、体調の回復状況などを確認しながら慎重に職場復帰を検討する必要があります。

(※1)厚生労働省 「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)令和2年5月7日時点版」10 その他(職場での嫌がらせ、採用内定取消し、解雇・雇止めなど)問6(2020年5月11日最終閲覧)

4.濃厚接触者の特定

4-1.濃厚接触者の定義

 国立感染症研究所感染症疫学センターは令和2年4月20日時点で、感染者との濃厚接触者の定義を以下の通りとしています(※2)。

(※2)国立感染症研究所 感染症疫学センター「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領 令和2年4月20日版」

「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。

  • 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
  • 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた者
  • 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
  • その他:手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。

「患者(確定例)の感染可能期間」とは、発熱及び咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含めた新型コロナウイルス感染症を疑う症状(以下参照)を呈した2日前から隔離開始までの間、とする。

*発熱、咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、頭痛、関節・筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐など

 以上のことから、社内での濃厚接触者は、「発症の2日前から1メートル以内で15分以上接触した人」(令和2年4月20日時点の定義)を目安に特定していくことになります。

4-2.社内の濃厚接触者の特定方法

 先に行った感染が疑われる従業員からの行動調査の結果を踏まえ、当該従業員が発症(37.5℃以上の発熱などの症状が発症)した日の2日前から最終出社日までの行動歴(場所など)について職場内でヒアリングを行います。感染者と発症日および前2日間、周囲半径1メートル以内で15分以上の接触がある者について、濃厚接触者の疑いがある者としてリストアップします。

 濃厚接触者としてリストアップされた従業員については、症状の有無にかかわらず、最終接触日より起算して暦日14日間の自宅待機を指示することを検討しましょう。

4-3.濃厚接触者の自宅待機中の賃金

 濃厚接触者に関する自宅待機中の賃金は、以下のように場合によって取扱いが異なります。

(1)行政側からの要請や指示による休業の場合は、不可抗力のため、給与の支払い義務はありません。

(2)発熱などの新型コロナウイルスへの感染が疑われる症状がある場合には、濃厚接触者も、社会通念上労務の提供ができる健康状態にないと考えられるため、給与の支払い義務はありません。なお検査の結果、陰性であった場合や完全に症状が消失した場合は、上記3−5と同様に職場復帰のタイミングを検討します。

(3)社内の感染予防のために、症状が出ておらず通常通り勤務が可能である者について、会社の自主判断によって一斉に休業・自宅待機させる場合は、不可抗力には該当しませんので、労働基準法26条に基づき、休業手当(平均賃金の6割以上)を支払う義務があります。

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