社員が新型コロナ感染でも慌てない! 労務対応チェックリスト、初動から対外的発表まで(5/5 ページ)

» 2020年11月13日 07時00分 公開
[BUSINESS LAWYERS]
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6.接触場所の消毒

 発症者や濃厚接触者の行動歴から、手指などの接触場所の洗い出しを行い、消毒すべき場所を特定します。

 消毒場所としては、感染者が、最終出社日および前2日間に15分以上の使用があった場所や濃厚接触者の手指がよく触れた場所や共用場所(食堂、更衣室、トイレなど)が望ましいです。

7.対外的発表

 新型コロナウイルスの感染者が出たことについて、適切なタイミングと内容で対外的に発表しなければ、直接の取引先に対する信用低下、地域住民の不安、株価への影響などを招きます。特に、直接の取引先などで濃厚接触者が想定されるような場合には、直ちに取引先にその旨を伝えて今後の対応を協議しなければなりません。また、ビルや建物の所有者や管理者に対しても、直ちに報告を行う必要があります。消毒作業の実施や今後の施設利用について検討する必要があるためです。

 報告内容としては、濃厚接触者の特定や感染経路確認との関係で「誰」が感染したかという情報も必要になります。この場合でも個人情報の取扱いについては十分に配慮するとともに、先方の担当者にもその旨を伝え、情報は限られた範囲で取り扱うべきです。

 それ以外の社会一般や地域に対する発表に際しては、感染予防措置として、これまでに企業としてどのような取組みを行ってきたのか、また今後どのように拡大防止措置を取るのかという点が重要になります。その点を明確にする公表文書を作成するのがよいでしょう。この場合、目的との関係では、新型コロナウイルス感染者が具体的に「誰」であるか、どの部署であるかなどの情報までは開示の必要がないと考えます。

8.おわりに

 新型コロナウイルスを取り巻く状況や政府の施策は日々変化しています。そのため、企業には、常に新しい情報へのアップデートを行いながら対応していくことが求められます。新型コロナウイルス感染拡大への対応については、杜若経営法律事務所「新型コロナウイルス感染症に関する労働問題Q&A」も参考にしてください。

 後日掲載する後編「従業員本人や家族の新型コロナ感染疑い 企業が検討・実施すべきポイント 賃金・補償・予防を中心に」では、「休業・自宅待機中の賃金の取り扱い」「感染の疑いのある従業員への対応」「従業員の家族に感染が疑われる症状が出た場合の対応」「感染予防と企業の責任」などのポイントについて解説します。

岸田 鑑彦弁護士 杜若経営法律事務所

杜若経営法律事務所パートナー弁護士。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。平成21年弁護士登録、杜若経営法律事務所(旧 狩野・岡・向井法律事務所)入所。経営法曹会議会員。企業人事担当者向け、社会保険労務士向けの研修講師を多数務めるほか、「ビジネスガイド」(日本法令)、「先見労務管理」(労働調査会)、労働新聞社など数多くの労働関連紙誌に寄稿。著書「労務トラブルの初動対応と解決のテクニック」(日本法令)。

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