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デジタル人材だけでは、DXは実現しない 必要不可欠「ブリッジパーソン」の育て方連載・デジタル時代の人材マネジメント(2/3 ページ)

» 2020年11月25日 07時00分 公開
[岩田紗季ITmedia]

 ブリッジパーソン育成に効果的な方法として、(1)現場でのデジタルビジネス経験(OJTアプローチ)、(2)デザインシンキングの徹底教育(Off-JTアプローチ)の2つが挙げられる。

(1)現場でのデジタルビジネス経験(OJTアプローチ)

 デジタルビジネスを率いることのできる人材を育てるには、実際の経験をさせることが最も近道である。しかし、伝統的な大企業であればあるほど、自社内でそのような経験を十分に用意することは難しい。

 そこでいくつかの企業が採用している手段が、スタートアップ企業へ人材を派遣し、そこで実際にデジタルビジネスを経験してもらうという方法である。

 LoanDEAL(東京都港区)は、出向制度を活用して大企業の社員をベンチャー企業のプロジェクトに参加させるレンタル移籍プラットフォームを提供している。このサービスを活用し、パナソニックは次の100年を見据えた働き方改革「a better workstyle」プログラムの一環として、2018年から「社外留職」(※2) 制度を導入した(※3)。

 これは希望した社員が最長1年間、同社に籍を置いたまま別の会社で業務することを可能にする制度である。対象となるのは、入社4年目以上で所属部署に1年以上在籍している社員となる。別会社で業務を行うことで、全く違う風土や価値観の中で仕事を進めていくための適応力や、自社にはいない社員との意見交換、プロジェクトを通じて自由な発想力を身に着けてもらうことが狙いである。

 この留職制度の特徴は、デジタルビジネスなどを行うベンチャー企業の中に入って、チームの一員として業務を経験できるところにある。大半の社員がデジタルを活用したサービス・プロダクトの事業化推進や事業開発を担当するため、実際にエンジニアやマーケターなどのビジネス人材をつなぐブリッジパーソンの役割を担うことができる。

(※2)「社外留職」はレンタル移籍のパナソニック内での呼称

(※3)LoanDEALプレスリリース(2018年6月29日)

(2)デザインシンキングの徹底教育(Off-JTアプローチ)

 デジタルとビジネスをつなげ、新たなイノベーションを生み出していく思考方法として「デザインシンキング」が注目されている。デザインシンキングを活用すれば「顧客にとっての価値」にフォーカスでき、デジタルとビジネスをつなげるための共通のビジョンを生み出しやすくなる。

 このビジョンの共有化が、デジタル人材とビジネス人材のコンフリクトを解消し、デジタル化を前に進めていくドライバーとなる。そのため、先述した留職制度のように実際に社員にデジタルビジネスを経験させるという「実践型(OJT型)」の育成がある一方で、ブリッジパーソンの育成としてデザインシンキングを共通のフレームワークとして浸透させるという「Off-JT型」も有効であろう(図表3)。

photo (図表3)ブリッジパーソンの育成に寄与するデザインアプローチ

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