一抹の懸念は、緊急事態宣言が解除された後、原則出社に戻った企業が多かった点である。せっかく、今まで進まなかった在宅勤務が定着しかけたのだから、時計の針を戻さず、そのまま常態化してほしい、すべきだと考えている。
後戻りしてしまった企業の多くは、「在宅勤務とオフィス勤務、どちらが生産性が高いか」という議論により、オフィス勤務を選択したようだ。背景には、ITソリューションの活用不足や、それに伴うコミュニケーションの減少などがあるとみられる。
しかし、「在宅かオフィスか、どちらか一方で働け」と二者択一を迫ることは、ニューノーマルの働き方として適していない。つまり、「そもそも、その仕事の目的は何か?」「どのような状態だと、最も生産性が高まるのか?」「そして、その場所は、どこか?」を考えることこそが、本質的な捉え方なのである。
企業としては、従業員のリソースを最大限に生かすことができる働く場の選択肢を提供し、個人は、自律的に働く場を選択する。このような世界がニューノーマルの働き方であり、ようやく日本が追い付きつつあるグローバルスタンダードでもあるのだ。このグローバルスタンダードという点では、ジョブ型雇用の進展にも期待したい。職務が明確となれば、管理職にありがちな「リモートワークではメンバーはサボってしまう」という疑心暗鬼もなくなるはずだ。在宅勤務・リモートワークがさらに進展していくきっかけにもなるだろう。
いずれにせよ、コロナ禍という大きな出来事により在宅勤務やDXが進展し始めた激動の、そして総務にとっては大変な1年ではあった。だが、なかなか進まなかったことが進み始めた、大きな転機の年でもあったといえる。さて、21年はどんな変化が起こっていくのだろう。
株式会社月刊総務 代表取締役社長 『月刊総務』編集長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)、『経営を強くする戦略総務』(日本能率協会マネジメントセンター)
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