まずは現在の世界の自動車メーカーの勢力図を把握しておこう。ドイツ勢はVW(フォルクスワーゲン)グループとダイムラー・グループ、BMW(ビー・エム・ダブリュー)グループに集約され、それぞれ商用車については英国や米国などの伝統あるブランドも傘下に収めている。
その他の欧州メーカーでは、ボルボは中国の吉利(ジーリー)、ジャガーとランドローバーはインドのタタが傘下に収めているが、どちらも独立性は保たれている。ボルボに至っては吉利の新ブランドであるLYNK&CO(リンク・アンド・コー)とプラットフォームを共有することで、より効率の良いクルマ作りが行えているほどだ。
吉利は、ボルボカーズの親会社であるだけでなく、トラックメーカーも含めたボルボグループの筆頭株主となっているほか、ダイムラーグループの筆頭株主にもなっている。今後さらに株を買い進めて影響力を増す可能性もないわけではない。しかし最近は、米国も欧州も中国資本を脅威と見ているため、十分に警戒しながら付き合っていくのだろう。
一方、欧州最大のVWグループは、再編に着手することになったようだ。一部報道で噂されていたランボルギーニとドゥカティを売却するという話は否定されたが、今後これが起こり得ないと断言はできない。
またこれまでベントレーは、VWグループ内でスーパープレミアムグループとされていたが、先頃、プレミアムグループのアウディブランドの管理下に移行することが発表されている。その目的は、電動化のため構造をアウディと共用化することのようだ。20年に、ついに旧世代のパワーユニットと決別したベントレーだが、今後アウディとプラットフォームを共用するとなれば、電動化の推進と同時にベントレーらしさをどう演出していくかは、気になるところだ。
ドイツ、ニーダーザクセン州にあるVWのヴォルフスブルク工場。KdF-Wagen(ビートルの前身)の生産が始められたVWの本拠地であり、今もVW車が生産されるが、トヨタと世界一の生産台数を競い合うメーカーだけに世界中に生産拠点を展開している(nmann77 - stock.adobe.com)
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菅政権による自動車の電動化規制に注目が集まっている。カーボンニュートラルによる電動化規制は世界中に広がっており、自動車業界を大きく揺るがすことになるだろう。そして、これまでの動きから見えてくるのが主役交代だ。今後は、完成車メーカーからサプライヤーへ、主役がシフトすると考えられる。
- 果たして自動運転レベル3は、ドライバーにとって優しいのか?
人間不要の自動運転はレベル4、レベル5と呼ばれる。しかし、現状は機械とドライバーのハイブリッドであるレベル2とレベル3が射程に入ってきたところだ。しかし、このレベル3はさまざまな問題を抱えている。そのため、実用化についてもメーカーによって方針は大きく異る。
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日産自動車経営陣の新体制が固まった。3頭体制への期待は高いが、その周囲の役員の間にはさまざまな思惑がうごめいているという情報もある。日本とフランスの国策企業というプライドが、足を引っ張りあっていくなら、良いクルマやサービスも生まれない。
- 新燃費規程 WLTCがドライバビリティを左右する
ここ最近よく聞かれるのが、「最近の新型車ってどうしてアイドルストップ機構が付いてないの?」という質問だ。全部が全部装備しなくなったわけではないが、一時のように当たり前に装備している状況でなくなったのは確かだ。それに対してはこう答えている。「燃費の基準になる測定方法が変わったから」。
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「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
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