日産三菱ルノーのアライアンスは崩壊するか?コロナ禍で加速する自動車業界の勢力争い(3/5 ページ)

» 2020年12月25日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

米国、そして日本メーカーの今後の可能性

 かつてはビッグスリーと呼ばれた米国勢はどうだろう。クライスラーはイタリアのフィアットと合併しており、21年にはフランスのグループPSAとも合併することが決まっている。

 09年の経営破綻から再生されたGM(ゼネラルモーターズ)は、中国と北米市場に集中した結果、順調に業績を伸ばしてきたが、コロナ禍によって業績は再び乱高下した。それでも同社の強みである小型トラックの売り上げが伸び、第3四半期には業績を大幅に回復している。現在の同社は、EVのラインアップ充実に向け、活発な開発を行っている。

 そして米国内でGMが成長していけるかは、政府が充電インフラなどを含むEV転換をどうフォローするかに懸かっている。急増するEVに対応できるだけの充電インフラが整わなければ、米国でのEVブームはまた冷え込むことになるかもしれない。

 日本の自動車メーカーの状況はどうだろう。トヨタは、コロナ禍になってすぐ2兆円の融資枠の確保に動いた。コロナ禍では、キャッシュフロー確保のために金融機関と融資枠を交渉をした企業は、自動車メーカー以外も珍しくはない。しかし、トヨタ銀行とまでいわれたほど潤沢な資金を有しているトヨタでさえ、このコロナ禍を未曾有の危機だと判断したのだ。

 トヨタ本体だけでも37万人を雇用する大企業ゆえ、経営判断のスピードが生死を分けることにつながりかねない。この経営陣の決断の早さこそ、日本の産業界を支える基幹産業の代表であるという自負と責任を感じるとともに、トヨタの危機感の表れでもある。

 スバルは水平対向エンジンと4WDを武器に北米市場で存在感を示してきたが、電動化への対応には不安が残る。北米市場を頼った経営ではリスクが高く、とはいえ国内需要の限られた車種展開では取り込める顧客層が薄くなりやすい。

 マツダはデザインとパワートレイン技術で独自のキャラクターを確立したが、これから厳しくなる燃費規制に独自技術で対応できなければ、トヨタの子会社に成り下がるリスクを抱えている。今後はプラットフォームの共有化や部品の共通化などで、グループ全体のコスト改善も進めていくはずだ。

 これらメーカーよりも危険水域に陥りかねないのが、独立しているホンダと、日産・三菱だ。ホンダは資本提携こそないものの、GMと自動運転など技術開発分野で業務提携を結んでいる。F1参戦を来シーズン限りで中止し、リソースを環境対策へ振り分けるようだが、これがホンダの危機感の現れなのであれば、いささか物足りない印象を受ける。

 “世界初”や“独自技術”にこだわってきたホンダには、クルマのもつ楽しさを表現しながらも燃費規制に対応したクルマを期待したいところ。国内市場では現状、軽自動車需要に対応するしかなく、高価格ながら採算性の低いラインアップをどう改善していくかが、業績を左右することになりそうだ。

トヨタの第2四半期決算の記者会見に出席した豊田章男社長。四半期決算に社長が出席するのは異例のことで、それだけ現在が重要な局面であることを示している。第2四半期の業績自体は予想以上に好調で、社員が一丸となって工場停止の期間もカイゼンに費やした結果だと語った

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