20年上半期は、コロナ禍で業績が急落したブランドも、下半期は急速に回復しているところが多い。売り上げの戻り方は車種や販売地域によって異なるが、回復の要因はおおむね2つのパターンが考えられる。
1つは、ロックダウンによって移動の自由を奪われた市民が、解除後に安心して自由に移動するための手段としてクルマを買い求めたパターンで、もう1つはコロナ禍以前からクルマの買い替えを検討していたユーザーが、解除後に買い替えを済ませたパターンだ。
しかし、いずれも業績回復は揺り戻しによるもので、喜んでばかりもいられない。なぜならコロナ禍によってマイカーの価値が見直された反面、感染を予防しながらの移動はコストが上昇する。クルマ関連の出費が増えれば、他の出費が引き締められ、そのしわ寄せはさまざまな部分に現れることになる。
例えば、外食産業やアパレルは外出自粛を機に業績が悪化している。つまり、コロナウイルスに端を発せずとも他の消費を抑えることは、それら従事者の収入を直撃し、それは巡り巡ってクルマの販売にも影を落とすことにつながる。
さらに、買い替えるクルマの選択も自然とシビアになってくる。購入するクルマの価格や機能をより吟味する傾向が強まるだけでなく、付加価値の有無も大きな選択理由となるだろう。加えて30年代からエンジン車の販売が禁止されると聞けば、次の買い替えタイミングを同時に考えるユーザーもおのずと増える。下取り価格に大きな差が出てくるからだ。
これらの背景を踏まえると、これまで以上に長く安心して乗り続けられるクルマが選ばれるようになるだろう。その点でEVは、バッテリーが劣化して容量が80%程度になると、航続距離は半分程度になり、実用性が著しく低下してしまう。そのため、バッテリー搭載量の少ないハイブリッド車が、引き続き強みを発揮するはずだ。
自動車メーカーにとってのコロナ禍は、クルマの存在意義を再認識でき、販売台数を伸ばすチャンスともなるが、競争が激化する要因でもある。これからはより厳しい戦いを強いられそうだ。
GMが開発中のハマーEV。現在は生産を終了しているHAMMERブランドは、着々と復活へと進んでいるようだ。EVでは燃費の差が気になりにくいため、こうした個性的なモデルが再び人気を得る可能性も高まる Photo by Jeffrey Sauger for General Motors
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