学生の自宅に“仕事体験キット”送付、オンラインでインターン 「実際にモノに触れないと分からない」悩みを解消交通費より安く済む(1/2 ページ)

» 2021年01月13日 07時00分 公開
[人事実務]

 本記事は『人事実務』(2020年12月号)「企業の採用最前線」より「マイスターエンジニアリング」を一部抜粋、要約して掲載したものです。

 当該号の詳細はこちらからご覧いただけます。

「教材」を使ってよりリアルな仕事体験を

 建物・施設の維持管理を一手に引き受けるマイスターエンジニアリングは、ファシリティ事業とメカトロ事業を展開する企業だ。同社の求める人材像は、「仲間とのコミュニケーションを大切にし、自ら主体的に考え、チャレンジする」。具体的には、現場でクライアントからの要求に臨機応変に対応して自ら行動できる「主体性」、サービスを改善するための方法やアイデアを考えて周囲に伝える「コミュニケーション」、技術者として自身の能力を高めるための「向上心」の3つを重視しているという。

<会社概要>

 ●社名:株式会社マイスターエンジニアリング

 ●設立:1974年6月

 ●事業内容:半導体製造装置、各種メカトロ機器および建築設備のメンテナンス&エンジニアリング等

 ●従業員数:1091人(単体、2020年4月現在)

 ●本社: 東京都港区4−1−23三田NNビル3階

 さて、そんな同社が昨年からオンラインによる1dayの仕事体験を始めた。技術者としての採用がほとんどのため、もともと、現場の第一線で業務を行っている若手社員が講師となり、実際に手を動かしながら学ぶ形のインターンシップを行っていたのだが、新型コロナウイルスの感染拡大や地方から来社する学生の負担などを考え、仕事体験として来社型のほかにオンラインでも実施することにした。

 昨年はオンラインでのインターンシップを実施することにした企業は多いが、同社の取り組みは他とは一線を画したもの。学生の自宅に教材キットが届くコースもあり、オンラインでも実際の仕事に近い内容を体験できるという。

 同社の仕事にはプログラムを組むといった、オンラインでの仕事体験がしやすいものもある。しかし、設備の修理や機械の組立てといった仕事はやはり手を使ってモノに触れないと実際のところが分からないことが多い。そこで「教材」を学生の下に送ることにした。

 「技術者になるうえで、デスクワークとフィールドワークのどちらを希望するのかという点を学生に認識してもらうことから始まります。『開発をしたい』といっても、実際に手を動かして、モノが動いている場面を見ることができる仕事がいいのか。それともパソコンのなかで設計をして何かを作り出す仕事がいいのか。そこが分からないと、働き始めたときにミスマッチが起こります。それを防ぐため、当社ではさまざまな職種の技術者から学び体験できるようなカリキュラムを用意しています」と言うのは人財開発部長の中園睦寛氏。

 いくつかのコースがあり、それぞれ教材は異なる。コースは「フィールドエンジニアコース」「機械設計コース」「組込みソフトコース」「生産技術コース」の4つだ。各コースの定員は5〜10人程度で、1dayで実施している。「フィールドエンジニアコース」ではPLC(機械自動制御装置)を含む機器を組み立てて、動作確認などを行う。

photo 「フィールドエンジニアコース」で用いる体験キット

 「20代の若手技術者が講師となって、オンラインで組立て方や電源の入れ方を説明します。その後、組み立ててもらうのですが、教材には学生に対する課題が発生するように仕込まれていまして、それをグループワークで解決していく。これは現場の仕事とまったく同じです。学生が実際に入社したとき、どのくらい現場で対処できる素質があるかという点も私たちはみています」(中園氏)

 「教材」にはテスターのような検査機器も入っていて、それを使って問題点を洗い出していくことになる。

 「機械設計コース」では「カップ麺上蓋検査機」に触れながら、仕様変更によるブラケット(支持具)の設計変更を体験する。コストについてもグループワークで考えながら最後に発表を行う。「カップ麺上蓋検査機」はインターンシップ用に作った装置だ。

 「学生の皆さんには機械設計という仕事は1人で黙々やっていればいいというイメージがあるようですが、実際にはディスカッションしてアイデアを出し合うことになります。それが楽しいと思えるかを体験してもらいたいと思っています」と言うのは人材開発部 採用グループの圓谷望氏。

 「組込みソフトコース」は、パソコン上のシミュレーターを用いて電子回路を作成するというもの。実際の仕事ではプログラミングだけで終わらず、配線作業もすることになるのだが、これに関しては教材を送らず、パソコン上のシミュレーションで回路設計まで行うことにした。やはり、グループワークがあり、講師やメンバーとコミュニケーションを取りながら課題に取り組むことになる。

 「生産技術コース」は顧客に提案する改善計画のデザインレビューをチームで作成するというもの。コストを下げる方法や効率を上げる方法を考え、プレゼンをするところまで行う。とくに教材はないが、生産技術では比較対象されるようなアイデアを出す必要があるため、やはりチームでのコミュニケーションが重要な要素となる。

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