2020年9月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定されました。より具体的に、踏み込んだ内容になっていますが、その改正ポイントを解説します。
政府は、かねてより柔軟な働き方の一つとして、副業・兼業を推奨してきました。
2018年1月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下「旧ガイドライン」とします)を策定しています。その後も検討を続け、2020年9月1日には改定版(以下「新ガイドライン」とします)を公表しました。
本稿では、新ガイドラインの改定部分と、注意点などを確認していきます。
2018年7月に公表された総務省の就業構造基本調査(2017年に調査)によると、有業者に占める副業のある人の割合は4.0%(非正規雇用者5.9%、正規雇用者2.0%)です。
今後、副業をしたいと思っている人は、6.4%(正規雇用者5.4%、非正規雇用者8.5%)で、それほど大きな数値とはなっていません。
しかし、2020年になってからのコロナ禍により、労働環境は大きく変化しました。感染予防のためテレワークを導入する企業が増え、労働者に時間的余裕が生まれました。副業・兼業(以下「副業」とします)を考える人が増えているようです。
業種によっては業績が大きく落ち込み、ボーナスや給料の減額により、生活のために副業せざるを得ない人もいます。収入減少を補うため、副業を積極的に容認する企業側の動きもあります。
また、大手企業を中心に労働時間を大幅に見直し、休日を増やす動きも報道されています。副業を推進する機運が生まれているといえるでしょう。
近年の裁判例では、勤務時間以外は労働者の自由な時間であり、その時間を利用して他の仕事をすることについて使用者は規制できないとする判断が示されています(マンナ運輸事件 京都地裁判平24.7.13)。
新旧ガイドラインともにこの考え方を踏まえて、原則、副業を認める方向とすることが適当としています。
図表1にあるように、企業が副業を容認する場合には、いくつかの留意事項があります。新ガイドラインでは、それを明確にしておくために、就業規則の整備と労働者との十分なコミュニケーションが必要であるとしています。
さらに、図表2に該当するような理由があれば、企業側が不利益を被るおそれがあるため、副業を認めないことができるとして、就業規則に規定することを促しています。
ガイドラインは考え方の基準や望ましい在り方について示したもので、法的拘束力はありませんが、このガイドラインを参考に、各企業の実情に応じて、必要な対策を考えるとよいでしょう。
労働基準法では、労働者が複数の事業所で働いた場合、労働時間を通算すると規定されています(38条1項)。
これにより労働時間管理が煩雑になることが、各企業が副業について消極的になっている理由の一つと考えられています。
新ガイドラインでは、これらの点について細かく記載しています。
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