JR西日本の注目ポイントは、乗客の利用状況を勘案し、幹線の日中ダイヤでも運転区間の見直しを行なうことだ。特に顕著なのは、山陽本線の広島支社エリアだ。
まず、主に土休の広島ー岩国間を運転する快速「シティライナー」の本数を大幅に削減する。土休の運転に限定しているのは、世界遺産で名高い宮島への観光客輸送を強化するためであろう。また、広島ー宮島口間は広島電鉄と並行する区間があることから、速達性をアピールし、デパートや行楽地などの輸送強化に充てたものと推察する。
しかしながら、新型コロナウイルスの影響で、乗客が大幅に減った。そして、JR東日本の快速「仙台シティラビット」と同様、途中駅で普通電車に追いつき、追い越すこともない。利便性と速達性の両立が図れず、大ナタを振ったのだろう。
また、日中の糸崎ー白市間は毎時片道2本から1本、大野浦ー岩国間は毎時片道3本から2本に減らす。
前者は糸崎ー三原間を除き、山間部を走行するせいか、沿線人口が少ない。途中駅の利用客も少なく、乗客の多くは糸崎・三原ー広島間を乗り通す。
後者は、宮島口以西の乗客が少なく、列車によってはガラガラ。JR西日本広島支社は12年3月17日のダイヤ改正で、広島ー岩国間の普通電車を毎時片道4本から3本に減らしており、今回のダイヤ改正でさらに減らす。前者も含め、新型コロナウイルスではなく、少子高齢化や人口減少の影響と考えられる。
日本の鉄道は、環境の変化とともに発展し、人々の生活に潤いを与えてきた。しかし、少子高齢化や人口減少に加え、新型コロナウイルスの影響で、インバウンドの利用客が見込めない事態に陥っている。少なくとも新型コロナウイルスを根絶しない限り、22年以降のダイヤ改正も明るい話題が少ないだろう。
岸田法眼
『Yahoo! セカンドライフ』(ヤフー刊)の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降、フリーのレイルウェイ・ライターとして、『鉄道まるわかり』シリーズ(天夢人刊)、『bizSPA! フレッシュ』(扶桑社刊)、『AERA dot.』(朝日新聞出版刊)などに執筆。著書に『波瀾万丈の車両』(アルファベータブックス刊)がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング