新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークが急速に普及した。その一方で、総務・人事・経理などのいわゆるバックオフィス(管理部門)と呼ばれる部署は他の職種に比べ、出社して作業をしている割合が高い。
そのような中、「バックオフィスこそ、ワーケーションをすべき」と力説するバックオフィスの専門家たちがいる。
350以上の企業や自治体、官公庁などでの組織変革支援や業務改革支援の経験を持つ、作家でありワークスタイル専門家の沢渡あまねさんと、業務改善コンサルティングやBPOサービスを提供するWe will accounting associatesの代表取締役で税理士の杉浦直樹さんだ。
一般に、テレワークさえ難しいとされるバックオフィスに、ワーケーションを勧める理由とは何なのか。バックオフィスが“オープンな経験”をすることで企業が得られるメリットや、成長できる企業であるためにどのようなバックオフィスを作り上げていくべきかについて沢渡さんと杉浦さんの対談から探る。
沢渡あまねさん(以下、沢渡): 私はワーケーションという言葉が生まれる前から、ダムが好きなのでダム際に車を停めて、車内や東屋など自由な場所で働いてきました。それを支えたのがWeb会議やチャット、ファイル共有システムをはじめとするデジタルツールです。テレワークやワーケーションをするには、まず「デジタルワーク」をする必要があると感じています。
杉浦直樹さん(以下、杉浦): バックオフィスが変革すべき理由は、企業組織の変化と関係していると言っていましたよね。
沢渡: はい。昔は製造業が主な産業で、“統制型”で組織が成り立っていました。しかし、最近では製造業大手も、先を見据えてITや通信業とコラボレーションしています。つまり他社との“コラボレーション型”、“オープン型”にしていかないと生き残れない世の中になってきているんです。
他社と協力し合うオープン型企業になるには「デジタルワーク化」が欠かせません。しかし、契約書類のやりとりの手法や打ち合わせ方法、経費処理の仕方などはバックオフィスが決めている。そこがオープンな経験をしていなければ、従来のやり方の不便さに気付けない。アナログな方法を内部規定で強要して、企業のオープン化の足かせになってしまうかもしれないのです。そのためワーケーションなどの手段を通して、バックオフィスに携わる方には「オープンな経験」をしてほしいと考えています。
杉浦: バックオフィスがオープンな体験をするメリットには、「知見をためられる」という側面もありますよね。
基本的に自社内の取り組みなので、実験し放題です。そうして得られた知見から、自社の営業部隊を支援することもできるでしょう。その営業部隊の“営業先”が顧客企業のバックオフィスであるならなおさらです。
会社の在り方が変わっていく社会にあって、自社の変化、他社への提案のためにも、バックオフィスが保守的にならず、オープンな経験を積むことが大切だと思います。
沢渡: バックオフィスに多い“紙の業務”の存在が、それを阻害していますよね。緊急事態宣言下にあっても、ハンコを押すために出社する、ということが社会問題として話題になったのは記憶に新しいです。見積書や請求書、印刷物──これらがデジタル化できていないと、場所にとらわれない働き方が実現できません。
杉浦: そこで「バックオフィスこそワーケーションを」というわけですよね。
沢渡: そう。ひとっ飛びに(笑)
バックオフィス業務に携わる人たちに、テレワークだけではなくワーケーションまで経験してもらいたい理由が2つあるんです。
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